第12章 a half one
暗闇の空間
異常はない
アルコは つかんでいたベポの毛を離して数歩離れ、広い空間に歩みだしその場に座る。
(確か、この音)
暗闇の中、先ほど鳴らされた『ミ』の音を手さぐりでたどり、はじいた。
光った
しかし、目を向けるとやはり光っているかもわからない程の小さな光。
アルコは『ミ』が消える前に
もう一度 はじく
一定の間隔で
『ミ』をベース音にして、メロディをのせる。
3拍子のスローワルツ
甘い水の上を
スルスルと滑りながら
踊っている蝶ような
その音に合わせて天井のあちこちが、淡い緑色に光っては消える。
音色にあわせた神秘的な点滅は、続ける度に明るくなるようで、ぼんやりと互いの顔が時々みえるほどにまで達した。
ローはストロボのように消えては浮かぶアルコの演奏姿をみつめ、闇に隠された部分を脳内で細部まで再現していた。
はっきりと姿は見えないが
きっとあの顔で
あの唇で
あの髪で
『触りたい』という欲求を、握りこぶしにぶつける。
わざわざコイツらにさらしてやる事はない。
“あれ”はおれだけの ────