第11章 プライド
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アルコは近くのホテルで一夜を明かした。
それが、渡されていた金でできる範囲のささやかで唯一の抵抗。
『女として扱われることへの不自由さ』と
『女として愛されたいという欲求』
このまま潜水艦に戻っても、どちらにも振り切ることができない自分への苛立ちを整理できそうにない。周囲を巻き込まないようにするためにも、どうしても今は ひとりになりたかった。深夜から翌朝まで、短時間の利用の割には高い宿代を払ってでも。
安くない宿代相応の、広めの部屋があてがわれた。芸術なのか落書きなのかなんだかよくわからない、ごちゃごちゃとした柄の茶色のカーテン以外は、広い割りにこざっぱりとしていて気に入った。大きめのベッドの脇に、重たそうなテーブルと革張りの椅子が2つ。
テーブルの上には、昨晩ルームサービスで注文した飲みかけのウィスキーのボトルとグラスが置きっぱなしだ。
あまり眠れなかったが、シャワーを浴びると頭は冷え、気持ちもスッキリとした。
───── ずいぶん やっすい気持ちだな
単純な自分に愛想笑いをしていると、扉をノックする控えめな音が聞こえた。
「?」
一瞬、耳を疑った。
返事もせず、物音を立てないようにしていると、今度は急かすように早いリズムで扉が鳴った。
バスローブの上にタオルも羽織り、扉を開けると、昨夜この部屋を案内してくれたホテルの従業員の少年が立っていた。
深夜の飛び入り客に対しても にこやかに対応してくれた人の良さそうな彼は、慌てた様子で
「あなたのことを探している、目つきの悪い男と素行の悪い男が、もうすぐ上がってきますよ。大丈夫ですか ──────」