第11章 プライド
「遅ェぞ。『トラファルガー』」
(やっぱり、知り合いか…)
アルコは自分の気持ちをこれ以上波立たせないために、あえて口にしなかったのだが、確認の印を押されたような気になり、がっくりする。
キッドは入り口にくるりと椅子を向け、バーカウンターにふんぞり返った偉そうな姿勢で言う。
「なぁ、この女。おれにくれよ。1億で買ったんだったか。中古でも1億2000万出してやるから ──────」
バキィッッ!!!
アルコの斜め下からの肘鉄が、キッドのアゴにヒットした。
「はっ………くっくっくっくっ」
ローが笑った。それも、声をあげて。
鼻にかけるような笑い方ではあるが、楽しそうに笑ったのを、アルコは初めてみた。
「いっ……ってェ……っ!!」
(最低。どいつも こいつも)
悶えるキッドを尻目に、竪琴を担いで入り口へ歩み去る。扉の前では笑いをこらえるようなニヤついた表情で、ローが手を差し出してきた。
しかし、その手を取ることもなく
チラリともローの顔を見ることなく
歩みを止めることもなく
店を出ていく
「………………………」
「ブフッ。
ハッハッハッハッハッ……!!
ダッッセー!!!」
扉が閉まる音を確認したとたん、キッドは ばんばんと膝を叩き、涙目になるほどローのことを笑った。
「お前もな」
ローは先ほどまでアルコが座っていた椅子に腰掛け、酒を注文した。