第11章 プライド
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「─ んで、次の瞬間に…おれはヤツらをぶっ殺してたね…!」
「なにそれ。アホだね、男って」
「ハッハッハッ!! 言うねェ」
キッドという男は、大きな声でよく笑う男だった。
(なんか、ずいぶん 楽になったな…)
キッドの悪人気質だが明るさも感じられる笑い声に、先ほどまでの怒りや陰鬱としたモヤモヤが晴らされていた。
───── そう言えば
アルコはローのことを思い出していた。
ローがこんな風に声をあげて笑うところを見たことがない。いつもニヤリとするか、鼻にかけるような笑い方。
常に静かに、冷静であろうとする姿勢
その様子は、まるで『月』
対照的に陽気な『太陽』は ──────
ルフィ
頂上戦争で、彼は“兄”を目の前で失った。仲間と離れひとりで闘いに挑んだが、結果的に白ひげ海賊団や多くの周囲を巻き込み、時代を動かす大戦争を巻き起こしたとジンベエから聞いた。
あの太陽のような彼が輝きを失うなんて。
彼の『太陽』性を知っているアルコは、白ひげやエースや海軍がどうなったということより、ルフィが“心”を失うほどの状態に陥ったということが、一番 ことの重大さを物語っているように感じた。
ローの判断で、後はジンベエに任せ出航することになったので 正気の彼とは話ができていない。あの後…大丈夫だったかな。
ロー、ハンコック、ジンベエ、“冥王”レイリー。関わる人物すべてが彼を生かそうとする。彼の目覚めを導き、その中に加われたことが嬉しかった。
彼は必ず、また輝きを取り戻す。そして“騒動”、いや“世界”の中心に ────
彼の『仲間達』は、どうしたのだろう。芋づる式に、傍らにいる“あの男”を思い出す。
野獣のようで
少年のような
ってか、1回ヤッたくらいでいつまで引きずってるんだろ……欲求不満か
いや、きっと欲求不満の原因は ─────
「…………」
キッドは、アルコが自分ではない誰かのことを考えていることを悟り、イラついた表情を隠さない。
「お前さぁ……」
「いらっしゃい」
機械的なバーテンダーの声に、キッドの苛立ちは遮られた。