第11章 プライド
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アルファ島の港
倉庫街
男は燃えたぎる気持ちと力をもて余していた。
シャボンディ諸島での騒動
マリンフォードでの頂上戦争
間近で感じとった“麦わら”の引力に、言い表せない興奮、期待、焦り、不安……
それらがごちゃ混ぜになった感情をぶつける場所を探しながら、港の倉庫街を抜けて仲間達と酒場へ向かっていた。
ささくれだった気持ちを、優しく撫でつけられるような音が聴こえた気がした。
「キッド、あれは」
仲間のキラーが立ち止まり、倉庫の隙間からみえる港に目を向けている。
波止場のビットに女が腰掛け、ハープのような楽器を鳴らしていた。
どこかで見たような女 ────
「!」
そう思った瞬間、その女が何者かを嫌でも思い出せる印象的な帽子の男が、女に歩み寄った。
夕闇の中でもわかる、その帽子とシルエット。
男は女の肩に布をかけながら、耳もとで何かを言ったようだ。女は微笑みを返し、二人は顔を寄せ合って話し始めた。
(ハァ?! あれで『奴隷』……かよ………)
キッドは困惑した。
二人の雰囲気はまるで ───────
「頭ァ、行こうぜ。酒も女もお待ちかねだ」
「…………」
仲間に急かされても、その場で立ちすくんでいるキッドに、キラーは別の心配をする。『今、トラファルガーと衝突するのは厄介だ』と。
「キッド」
キラーは あえてキッドの心情に深く触れないよう素っ気なく促す。
「チッ。あぁ」
一行は酒場通りに歩みを進めていった。