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ゼルダの伝説 時を超えて

第1章 第一章



3ヶ月前のことだ。マーロン城に国民全員が一人ずつ呼び出され見せられたものがある。それは古代ハイラル文字が書かれた石板。内容は「神託」。
それを簡単に読んでしまったことが使者に選ばれた理由だ。

何故読めるのかはわからないけれど、普通に読めた。

そもそも姐さんと旦那さんは私が普段働く居酒屋の店主であったが、知らない人と知らない国に行きたくないという私の我儘に応えたマーロン王の配慮で着いてきてもらっている。

それでも姐さんと旦那さんは明日、マーロンに引き返す。そして、私だけが古代ハイラル文字で書かれた神託の意味を知るべく冒険に出ることが決まっていた。不安はあるが、ハイラルで有名な調査団の面々とともに行くことは決まっている。何度も神殿や湖の底など危険を潜り抜けてきた人たちに護られて行くのだ。怖いことなどあるわけがない…と、思って《いた》。

「え?」

明朝に部屋を訪ねてきた兵士は八の字に眉を下げていた。

兵士に連れられて城の中庭の方へと行く。
彼が説明してくれた内容は半々だった好奇心を地の底まで下げる話だった。昨夜、森の神殿へ先に行っていた調査団の全員が負傷して帰ってきたこと。調査団全員が重症ですぐに旅に行くことができないこと。城の兵士や騎士はみな任務があり離れられないこと。ゼルダ姫は調査の延期を案として出したが「神託の内容」のせいで大臣達が縦に頷かなかったこと。

「それで、森の奥に住む狩人を呼んだんです」
「その人、アテになるの…?」
「勿論!あのゼルダ姫が唯一友人と呼ぶお方でありながら、時折、兵士たちに稽古をつけてくれる強者です。彼なら充分任せられます」

信用はできなかったけれど、行かないという選択肢を選べるわけではない。一緒に話を聞いて怒ってくれていた姐さんも一緒に連れて帰るほどの権力は持っていないし、不安があっても行くしかないと誰もがわかっていた。
マーロンを代表してきたも同然。此処で拒否をすれば政治にも支障が出る。

(私一人の我儘で、行きたくないとは言えないよね…)

通り過ぎるステンドグラスの窓が、廊下に鮮やかな色を照らし出す。
城内にある教会から鳴り響くパイプオルガンの音が嫌なほど心臓を走らせた。

そして、歩き回った先、何度も曲がった廊下の先にその扉はあった。

「この先にその方が待機しています。私が案内できるのは此処までです」
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