第4章 光さす
「そこに着替えは置いてあります。まずは皇女らしく身なりを整えてください。」
皇女らしくだなんて、随分久しぶりに言われた気がする。
幼い頃の記憶。
1人、また1人と姿が見えなくなった侍女達を思い出す。
彼女らもまたいつも皇女らしく、お父上様に立派な姿を、と口うるさく言っていた。
あらためて自分の姿を見てみれば、汚れ色あせた薄い布の簡易服。ほつれて濡れ固まった髪は、子どもの頃褒められたブロンドの見る影もない。
確かに目の前にいる2人と比べれば、私はまるで物乞いだ。
「終わったら俺の部屋にこい。」
そう言って2人はまた足早に出ていった。
何年ぶりのお風呂だろうか…。
石鹸で肌を擦れば、泡が黒くなるのがわかった。
ふと鏡を見る。
自分の顔を見るのすら久しぶりで。
目の前にいたのは知らない女性のよう。
このまま死んでしまおうかと何度も考えていたのに、
まさかお風呂に入れる日がくるとは…
そっと湯船に足先をつけた。
ゆっくり、ゆっくりと体を湯に預ける。
「ふぁ……」
あまりの気持ちよさに声が出た。
こんなに気持ちのいいものだと忘れてた…
生きていてよかった、のかもしれない…