第7章 ②心が迷うたび、君の元へ。/天窓【月島】
胸の奥の奥まで届く声だった。
嬉しい。胸がギュッってなる。
「これで、伝わったか」
私が微笑むと、月島さんはまた困ったように目を伏せた。
頬に触れていた手が、そのまま名残惜しそうに耳の近くへ滑る。
今までそんな風に月島さんに触られたことが無かったので、肩がビクリとしてしまった。
「嫌か」
低い声で耳元近くで問われて、息が止まる。
「……嫌じゃ、ないです」
答えた瞬間、月島さんの表情が驚くほど柔らかく溶けた。
「……そうか」
その声があまりにも甘くて、ぼうっとしてしまう。
次の瞬間、優しい熱が額に落ちた。
「……え」
驚いて顔を上げる。
月島さんは、さっきよりずっと近くにいた。
「……今の??」
「何か問題でも?」
「いえ…ないです、けど……」
「けど?」
「……今の…ちゅー??」
言ってしまってから、恥ずかしさに耐えきれずふいっと横を向く。
月島さんはしばらく黙っていた。
やがて、繋いでいた手を優しく引かれる。
「……顔を上げろ」
「へっ?」
恐る恐る顔を上げる。
近づいてくる気配に、胸が高鳴りすぎて、自然と目が閉じられた。
今度は額ではなかった。
唇に触れるだけの、優しい口づけ。
月島さんの離れようとする気配に、無意識で思わず背伸びをしてその袖を掴む。
「……っ」
驚いたように息を呑む音がして、あ、しまったと思う。
それに追いつくように、月島さんの手がそっと腰に添えられた。
逃がさないように、でも壊してしまわないように優しく。
さっきよりも少しだけ深い口づけが重ねられる。
頭が真っ白になって、ただ月島さんの匂いと熱だけが胸を満たしていった。
「んっ…ぁ」
しばらくして、名残惜しそうに離れた月島さんの顔は――
相変わらず澄まし顔を取り繕おうとしていたけれど、耳の先どころか首元まで真っ赤だった。
勿論、私も。
月島さんは小さく息を吐くと、諦めたようにふっと力を抜いた。
そして、恥ずかしそうに目を伏せたまま、私の額に自分の額をこつんと預けてきた。
「……あなたには、本当に敵わんな」
「…?」