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永遠の恋〜信長の寵妃【イケメン戦国】

第118章 青い花の秘密


どれほど長い時間が流れただろう。
燭台の火が小さく音を立て、夜風が障子を微かに鳴らす。
その静寂を破るように、庭先でごく短く鳥が鳴く声が響いた。
それは自然にはあり得ない規則正しい一声で、信長の瞳が鋭く細められる。

「……来たか」

先程まで信長の周りを包んでいた静かな空気が一変し、獲物を前にした獰猛な獅子の如き威圧感が部屋を満たした。
朱里は、はっと息を呑み、信長の横顔を見つめる。


「御館様」

信長は腕を組んだまま、ゆっくりと障子の向こうへ視線を向ける。

「戻ったか」

「はっ」

障子の向こうから返る声は低く抑えられ、それ以上の言葉はない。
信長は顎を僅かに上げ、短く告げる。

「入れ」

返事はなく、静かに障子が開く。
闇の中から音もなく姿を現したのは、忍び装束に身を包んだ伊助だった。膝をつき、深く頭を垂れる。

「報告を」

「はっ…賊は山奥の廃寺へと入り、頭目と思われる男に硝子の花を渡しました。その男、花を偽物と見破り、海図の存在も知っておりました」

「……こちらの追跡にも気付いたか」

信長は平伏する伊助を見下ろしながら感情の篭らぬ声で言う。
伊助の装束が僅かに乱れており、袖口に刀で切られた微かな裂け目があることを信長は見逃さなかった。

「っ…面目次第もございません」

信長の鋭い視線を感じながら、伊助は袖口を押さえて深々と頭を下げた。

「構わん。気付かれたのなら、夜明けを待たずに攻め入るだけだ」

迷いのない一言に、信長が先の先まで想定済みであることを感じさせられる。その言葉に宿る覇気は、部屋の空気さえも震わせるほどだった。

伊助は深く頭を垂れたまま、「はっ」と短く応じる。
信長はまだ夜闇が広がる障子の外へと目を向けた。

「光秀と秀吉を呼べ。兵は最小限でよい。目立たぬようにな」

「御意」

伊助が音もなく姿を消し、その気配が完全に消えると、再び部屋は静寂に包まれた。けれど、その静寂が長く続かないことは分かっていた。兵の準備が整えば、すぐさま戦いが始まるのだ。
朱里はまた知らず知らずのうちに強く握り締めていた手に気付き、そっと力を抜く。

「……信長様」

呼びかける声は自分でも驚くほど小さく、揺らいでしまっていた。
信長は障子の向こうへ視線を外さぬまま、低く応じる。

「案ずるな。すぐ戻る」


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