第10章 意識し始めた頃
《クザンside》
俺のこの身体は、まだ能力を使い慣れてないのもあり不完全だ。自分の身体に傷を負わずとも、ボルサリーノ達みたいに痛覚も浴びなくて済む様な体じゃない
ましてや、臨機応変に対応できるような冷静な判断というのも俺には欠けている。あの時、何をすれば良かったかなんて今でも分からないんだ
ただ思うのは、能力者になって俺は最悪な思いをした。あの人を……クマラさんを目の前で助けられなかったという、最悪の思いを
「……強く、ならなきゃな」
自分の掌を見つめつつ、俺は目の前の野外訓練場に足を踏み込んだ。屋内だと見回りが多くて返されるから、ここなら人目も少ないし訓練しやすい。能力の練習にも使われているから持ってこいだろう
ゼファーさんの言っていた通りまずは心を落ち着かせ、精神統一し脳内でイメージする。俺の能力は自分の体を氷にし、尚且つ水分を凍りつかせることの出来る水分特攻みたいな能力だ。まずは今出来ることを戦闘でもたつく事無く出来るようになってから、また次の段階に進めとゼファーさんは言っていた
「……剣は完璧」
訓練中何度も練習して、戦闘でもすぐに作れた氷剣は今も普通に作れた。数枚の雑草で今回は形作ったが、中々鋭くて振りやすく、突きやすい形に出来上がってる。これを数滴の水でも出来るように、それから空気中の水分からも作れるようになれたらもう言うことはない
次は、と自分の体に目を向ける。パキパキと音を鳴らして凍りつく体に支障はなく、冷たいとも感じない。本体が氷だからだろうか
「……そう言えば、覇気とか何とか言ってたっけ」
俺が初めて目にした、手合わせの時に使用されていたという覇気。クマラさんは見聞色が色濃く、ガープさんは武装色をよく使うらしい。まだゼファーさんから詳しく教えてもらってないけど、あの人たちの化け物じみた強さはそこもあると話していたっけ
悶々としていると、不意に後ろが真夏みたいに暑くなり始めた。びっくりして振り返ると、そこには右半身をマグマで沸かすサカズキと光り輝く剣を肩に乗せたボルサリーノが
「二人共、なんで……」
「鍛錬じゃ。悪いか」
「ここは広いし、天井が無いから思う存分能力の練習ができるんだよねぇ~」
お前さんもだろ?と笑うボルサリーノに、まぁそうだけどと凍った手を頭の後ろにやる。小っ恥ずかしいところ見られたな…