第13章 出会いと別れのログ
「あら上手!最初の片っ端から破っていたのが嘘のよう」
「そう言うな。加減が難しいんだよ、これ」
クマラとトキがやっていたのは折り紙。幼い頃から遊びで折っていたらしく暇潰しに勧めると、クマラは相当極めたがる性質の為かどんどんのめり込んでいく
結果、一つ折るのにも破るか原型を留めない折り紙も、歪みひとつ無い鶴が折れる程には整ってきた。余計楽しくなったのか、クマラは子供のようにトキから様々な折り紙の種類を教えてくれとねだる。大きな子供が出来た気分のトキはそれに応え、楽しそうにより難しい折り紙を教えていくのであった
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「おぉ、千羽鶴か?クマラがこういうのを好きになるとはなぁ」
「見ろよシャンクス!でっけぇ被りもん!」
「うぉ!俺もそれ欲しい!」
ロジャー海賊団が元に戻ってくると、クマラはトキと一緒にのめり込んだ折り紙を各船員に配るという行動に出た。相当折り紙が楽しかったのか、完成度の高いものをみんなにもやりたかったのか、クマラはとても楽しそうにメンバーに配って回っている
そんな中、千羽鶴を渡されたロジャーは目を細めて「バレてないよな」とレイリーに小声で話しかけた。バレて無いはずだと告げるレイリーに、ならいいんだがとクマラに目をむける
(バレる訳には行かない。せめて、せめて俺が死ぬ迄は)
折り紙で作った兜をシャンクス達に被せて楽しそうに笑うクマラを目にし、ロジャーは少し痛む自身の心臓に手をやった。もう、長くはないことはクロッカスの診断と自身のこの苦しみから分かっている
ロジャーが病だと知れば、クマラはきっと何をしてでもそれを治そうとし、無茶をするだろうとロジャーは考えていた。不老不死のクマラにとって病は無縁であり、その血液も同様である事をロジャーは知っている
不治の病と言われる程の病気を治すのにどれ程クマラの血を有するかは、ロジャー本人もわかっていない。ただ、クマラの苦しむのは目に見えている事だけは確かだ
ロジャーは奥歯をかみ締め、もし病気のことがバレても血で何とか延命出来ることは墓場まで持っていくと決意を固める。いや、病気を発症してから、ロジャーはずっと決意したままだ。愛する人を、どんなものであれ傷付けるなど言語道断であると