第12章 “鬼”の跡目の迷いと決意(映画のキャラが登場。飛ばし支障無)
結局朝まで様子を見続けたバレットは、起床したクマラに訝しげに見られてから我を取り戻した。顔になにか着いていたと理由をつけて何とか逃れたものの、寝起きのクマラの表情にまだ若いバレットはドキドキと胸を忙しなく高鳴らせている
「そういえばお前バレットって言うんだってな。一回で覚えられたぞ」
ずっと居るからだろうな、と歯磨きをしながらクマラの言葉にそういえば覚えにくいと言っていたなとバレットは昨日のことを思い出す。クマラの事を話すレイリーの表情はまさに恋する少年のような純粋さで、俺はあんな気持ち一生わからんだろうなと、バレットは目の前でうがいをするクマラを見た
自身も洗顔や歯磨きを終えると、クマラから「ここはいつもひとりで使ってるのか?」と話を振られた。背丈がでかい為物等でも部屋の幅を取ること、自分と同じ部屋で寝るのを好むやつがいない等を話したバレットに対し、クマラは軽く「そうなのか」とだけ返す
寝心地良かったんだがなとソファーに手を着いたクマラに、物好きなやつだなと少し固めのソファーに座ったバレットに続き、クマラもそこに座る
「朝飯食いに行かなくていいのか?」
「それはお前もだろ」
「俺は食わなくてもやって行けるからな」
ゴソゴソとポーチを整理するクマラを横目に、バレットはこんな時間も悪くないかと硬いソファーにもたれ掛かる。クマラの整理するポーチの中から色々口紅やらが出てくるのは驚きだが、世界が広い分色んな奴もいるんだと彼は思い口にはしなかった
「それは使ってんのか?全部新品に見えるが」
「使ってないな。こういう系は贈り主と会う時くらいに限定してるんだ」
勿体ないし、と言いつつ整理をしてポーチにしまっていくクマラに対し、バレットはそうかとそれを見つめた。凛々しい顔に反して男らしい指に少しギャップを感じつつ、ロジャーがどうしてこの男に入れ込むのか気になり、その日から観察を始めることにしたのはクマラはもちろん知らない