第12章 “鬼”の跡目の迷いと決意(映画のキャラが登場。飛ばし支障無)
「ロジャーにも、勿論クマラにも内密にしていることなんだ。アイツらと俺の今の関係を壊すのが怖くて仕方ない」
「……海賊らしくない思考だな」
「ははっ!ある女性にもそれは言われた!仲間思い過ぎるとも言われたかな?」
だが感情があればそんなもんだよ、と言いつつレイリーは空になった酒瓶を置く。その瞳は少しだけ悲しそうで、それでいてどこか諦めているようなものが感じられた
バレットは理解に苦しみ、二人の関係性を問い質す。どうせ恋仲だろうと考えていたのだが、また予想の斜め上を行く返答に驚きを隠せなくなるバレット
「……本当に、親友なのか」
「あぁ、少し歪んだ親友だ。ロジャーが少し拗らせてる」
最初はただの親友だった。でも、ロジャーがとあることをきっかけにその関係に不満を抱いてしまい、クマラを騙す形で今の“親友”の状態へと定着した。クマラは未だにロジャーとの親友の関係に疑いを抱いていないし、ロジャーもここまで来てしまえば罪悪感もとうの昔に無くなっている
二人が何かやらかしたら俺に言ってくれ、と粗方話を聞き終わったレイリーは腰を上げて自室へと帰っていった。話を聞いたバレットは頬を掻き、複雑だったんだなと浅いため息を吐き立ち上がる
「……この顔で年上か」
部屋へと戻ったバレットは、レイリーとの話で聞いたクマラの諸々のことを思い出し寝顔を覗き込む。眉間のシワ以外のシワが見当たらない若々しい肌に、柔らかくてすべすべしていそうな唇。全てロジャーやレイリーより長く生きている人間とは思えないものばかりで、ただただバレットはその様子を見続けた
クマラが寝返りをうっても、それが目覚めたのでは無いとわかるバレットは眠れるようになるまでジッとクマラを見続ける。ある種の見蕩れている状態で、暫くすると気になったのか柔らかい唇に人差し指を当ててその感触を確かめたりし始めたバレット
完全に仲間として信用した訳では無いが、バレットにとってのライバルの様なロジャーが信用した人間。その心すら奪ったというのだから、気にならないわけが無いのだ