第11章 この気持ちを愛する貴方へ(※)
実行の日がやってきた。クマラはコングに挨拶を密かに入れ、ガープに見つからないため睡眠薬を含ませたお茶を提供し、ぐっすり眠っているガープに「すまない」と口付けてその場を去る
見回り兵にもバレずに海軍本部を抜け出したクマラは、自分の船に辿り着き錨をあげた。途端、辺りが赤く染まるのが目の端でわかり顔を上げる
「クマラさん、行くんですか」
そこには何時ぞやの様にマグマを纏い、じっとクマラを見つめるサカズキの姿があった。今回は感情による操作不能状態で、右半身は殆どマグマに纏われており、顔にもマグマが垂れている
それを見下ろしたクマラは、ため息を吐いて錨から手を離すと、サカズキの前に降り立ち「ちゃんと制御しろ」と覇気でデコピンする。それを食らって少し額を抑えたサカズキだが、クマラが海軍服を脱いでいるのを見てかドロドロとしたマグマは治まらない
「見回りか?」
「……はい」
「戻らなくていいのか」
「……多分」
サカズキは仕事人間で、仕事をほったらかしにして誰かに会いに来るような人間ではない。故に、少し溜めて話すのも相まって見回り自体が嘘なんだとクマラは気付いた。サカズキはクマラの事をこの時間帯になると、ずっと見張っていたのだ
こいつをどうするべきかと考えるクマラを他所に、サカズキは能力が反映されていない左手でクマラのマントを握った。どうしたと声をかけるクマラだが、サカズキは目を細めて口を一文字に塞ぎ、話そうとしない
このままでいる気だと思ったクマラはそっとサカズキのマントを掴む手の首を握り離そうとした。その瞬間、サカズキは全身にマグマを湧かせてクマラの身体を抱き締めようと腕を広げる
「あっぶなっ!」
覇気でダメージを軽減できるとは言え、マグマは流石に防ぎきれないとクマラはそこから離れる。サカズキはパクパクと口を動かすが、それが言葉を話しているかはクマラには分からない
刹那、サカズキのマグマは容量を増してボコボコと音を立て始めた。サカズキの帽子の鍔の下にある瞳は大きく揺らぎ、不安と悲しみでいっぱいの表情を浮かべている