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平等な死などない【ワンピース】

第11章 この気持ちを愛する貴方へ(※)


《サカズキside》

笑顔で見送れる筈などなかった。人目見て終わろう、見送ろうなんてどうして出来ると思ったのか分からない

目の前で、わしのハグを避けたクマラさんが訝しげにわしを見ている。こんな無様な姿見せて、幻滅させたかもしれん。失望したのかもしれん。ただずっとそばに居て欲しいなんて感情だけで能力が操れなくなったわしに……

苦しくて、わしは熱くなった胸元を服の上から掴む。プロポーズを断られた時から、わしは変じゃ。こんなにも苦しくて辛くて、自分の行動は空回りしてばかり

「クマラさん……」

小さく愛する人の名を呟き、わしはその相手を見据えた。どうしようかと考える姿に、わしはまた不安になる。恋愛相手としては見てくれない事はもう確定しているのに、そんな中で彼から関心を失ったらわしは、わしは……っ

また、手を伸ばした。行かないでくれと、捨てないでくれとマグマを纏った手で彼を掴もうとする。それをまた躱したクマラさんに二度目の悲しみを味わいつつ「どうして……」と呟いた

行き場をなくした手が宙を空振ると、わしの腕には何かがはめられた。ガクンと力が抜け膝を着くと、体に纏っていたマグマも消えていく

「……?」
「たく、マグマ状態で掴まれたら痛いだろ」

どこから取り出したのか、クマラさんの手には海楼石の手錠が握られていた。クマラさんがわしを避けた理由が単純な事であることを知り、胸の痛みはスっと引いていく

「ご、ごめんなさい」
「ん、いい子だ。謝れるんだな」

だが暫くはこのままだと、わしを立ち上がらせたクマラさんは口にする。ハグやらお別れのキスやら、ワシが想像もしてなかった事までしてくれた後は海軍本部に帰れと言われた

「……クマラさん」
「なんだ」

頬にキスをされた時の感触を楽しみつつ、わしはんっと目を閉じて顔を近付けた。いつ会えるかも分からないし、貞操概念が緩いクマラさんならしてくれるかもと淡い期待を抱いてやった事

流石にしてくれないかと体勢を整えようとした時、首元の服の襟を掴まれ口元に頬に感じた感触と同じ柔らかいものがあてがわれた。目を開けてそれを確認すると、口はもう離れたあとだがすぐ近くにはクマラさんの凛々しい顔

「マセガキめ」

ニヤリと笑ったその顔に、わしはただ見蕩れてしまった
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