イナズマイレブン-狼たちは狂犬を愛し喰う-オリオンの刻印
第1章 -
「な、何してるんだ!」
それには流石の円堂も口を出した。円堂は砂木沼に駆け寄り、心配そうに「大丈夫か?」と尋ねた。砂木沼は円堂の声にハッとしたように、ぎこちなく「大丈夫だ。」と返した。
それから円堂と一緒にいた風丸と坂野上は、砂木沼を手当てしてもらうためマネージャーを呼びに行った。
一方、砂木沼を殴った張本人である獣都は、グラウンドを出ようと歩き出した。しかし砂木沼に謝りもしない獣都をあの円堂が逃がすわけもなく、円堂は獣都の肩を掴んだ。
「何?」
獣都は円堂の方を振り向いた。
獣都の声から、機嫌の悪さがビシビシと伝わってくる。そんな獣都に少し怖気付く円堂。だが、仲間を傷つけられて黙っている円堂ではない。円堂はただ一言、「砂木沼に謝れ。」と静かに言った。
もちろん謝る気などさらさらにない獣都は、自分の肩に置かれていた円堂の手を掴み、そのまま地面に投げ飛ばした。
所謂、背負い投げというやつだ。
そして女子である獣都に背負い投げされた円堂は、驚きのあまり固まっていた。それはそうだろう。自分よりもふたまわりも小さい女子に、男である自分がいとも簡単に投げ飛ばされたのだ。驚かないわけがない。
「だっさ。」
獣都はそう吐き捨てるように言うと、今度こそグラウンドから出ていった。
それから獣都と入れ替わるようにして、マネージャーと趙金雲を連れた風丸と坂野上がグラウンドに戻ってきた。
「監督!」
「話しは風丸君たちから聞きました。砂木沼君、大丈夫ですか~?」
「はい・・・このくらいどうってことありません。」
趙金雲は砂木沼に声をかけるも、いつものようにヘラヘラ笑っており、全く心配しているようには見えなかった。すると、趙金雲の態度が気に入らなかった風丸は、趙金雲に勢いよく掴みかかった。
「監督、仲間が殴られたんですよ!」
「彼女も同じチームメイトなのですから、仲間ではありませんか~?」
「チームメイトを殴るような奴、俺は仲間とは思えません!」
風丸の言葉に坂野上も頷いた。しかし吉良、基山、砂木沼の三人は、風丸の言葉に違和感を持った。得に獣都に一番懐かれている吉良は、獣都が砂木沼を殴ったからとはいえ、仲間ではないと思えなかった。それどころか、吉良は砂木沼のことより獣都のことを心配していた。