イナズマイレブン-狼たちは狂犬を愛し喰う-オリオンの刻印
第3章 --
「あんた、誰?」
鋭く細められた目に苛立った声。獣都の機嫌は、明らかに最悪だった。剛陣は「ひぃっ!」と短い悲鳴を上げると、怯えたように稲森の後ろに隠れた。
「梅、起きたなら降りろ。」
「あれ、ヒロト?おはよっ!」
「ん、はよ。」
「えっ、何だよこの差!?」
自分と吉良に対する態度の違いに、納得がいかない剛陣。しかし既にもう、剛陣のことなど眼中にない獣都は吉良の背中から降り、正面から吉良に抱きついていた。
「顔洗ったら、ジャージに着替えてこいよ。」
「は〜い!」
「無視かよっ!?」
「どんまいです、剛陣先輩・・・」
稲森は慰めるように、剛陣の肩にポンッと手を置いた。
それから獣都は、ジャージに着替えるため一度自室へと戻った。着替えを終え、部屋を出ればそこには吉良が待っていた。
「あれ、ヒロト?」
「食堂、行こうぜ。」
獣都はパァッと笑い、「うん!」と元気よく返した。そして二人はさも当たり前かのように手を繋ぎ、食堂へと向かった。
食堂に行けば、既に何人かの選手たちが食事をとっていた。獣都と吉良も好きなものを皿に取り、席に着いた。二人は他愛もない会話を交え、食事を進めていく。そんな二人を少し離れた場所から、見ている者が一人。
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食事を終えれば、すぐに選手たちは趙金雲によってグラウンドへと集められた。グラウンドに入れば、ガタイのいい男とサーモンピンク色の髪をした男が趙金雲と共に立っていた。
「今日は皆さんに特別ゲストを紹介しますよ〜。スペイン代表キャプテン、クラリオ・オーヴァンさんで〜す!」
「よろしく。」
誰もがクラリオに目を向ける中、獣都だけは興味などなさそうに一人リフティングをしていた。しかし、一人だけ周りと違うことをしていれば一際目立つわけで、クラリオの視線はすぐに獣都へと向けられた。そしてクラリオは獣都を見るなり、驚いたように目を見開いた。
「何故ここにべスティアが・・・?」
「あれがべスティア?だが何も感じないぞ?」
「ははっ、どうやら“まだ”のようだな。」
クラリオは意味深な笑みを浮かべながら、ゆっくりと獣都に近づいた。