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イナズマイレブン-狼たちは狂犬を愛し喰う-オリオンの刻印

第1章 -


「ほーっほっほっ!皆さんの考えていることが手に取るように分かりますね~。皆さんはきっとこう考えているはずです。何故、連携もろくに取れない彼女を代表に選んだのか、と。理由は簡単です。彼女が世界に匹敵する程の実力を持っているから。例えチームプレーができなくとも、ね。」

監督の言葉に選手たちはゴクリと息を呑んだ。そしてまだぼーっとしている彼女をチラリと見る。しかし今の彼女からは何か凄いオーラを感じるわけでもなく、世界に匹敵する程の実力を持っているようにも見えなかった。選手たちの頭は混乱するばかりで、終いには監督が嘘をついているのではないかと思う者も出てきた。

「まあ嫌でも明日になれば、彼女の実力を目の当たりにすることになりますから。では、これにて解さ~ん!夕食の時間までは皆さん、自由に過ごしてくださいね~!」

気になる言葉を残し、疾風の如く去っていってしまった趙金雲。選手たちも考えるのはやめ、ミーティングルームから出ていった。

「梅~、行くぞ~。」

吉良の声でやっと我に返った獣都。獣都はすぐに返事をし、吉良の手を握った。そんな獣都の行動に一瞬驚くものの、吉良も獣都の手を軽く握り返した。

「なあ、このあと暇か?」
「えっ?ん~、暇だけど?」
「じゃあ一緒にサッカーしようぜ!」
「うん、いいよ!」

二人は施設内にあるグラウンドへとやって来た。するとそこには既に先客がおり、各自練習に取り組んでいた。獣都は自分たちの他に人がいることに気づくと、あからさまに嫌な顔をし、吉良の後ろに隠れた。

「あれ、ヒロトと獣都さん?二人も自主練かい?」
「まあな。でも梅がこれじゃあな・・・」
「あはは、獣都さんは警戒心が強いみたいだからね。そうだ、良かったら俺たちとシュート練習しない?」
「シュート練習?ああ、俺はいいぜ。梅はどうすんだ?」

吉良が獣都にそう問いかけたが、獣都は吉良の後ろから顔を覗かせ、犬のように唸っていた。どうやら目の前にいる基山を警戒しているようだ。吉良は小さく溜息を零したあと、獣都の目線に合うように屈み、「落ち着け。」と宥めるように呟いた。すると獣都は唸るのをやめ、しょんぼりとした様子で吉良を見つめた。

(本当に犬みたいな女だな。)
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