イナズマイレブン-狼たちは狂犬を愛し喰う-オリオンの刻印
第1章 -
ついに代表キャンプ場である、河口湖スポーツセンターに到着したイナズマジャパン一行。
「おい梅、着いたぞ。」
「んっ・・・。」
あの後、獣都は泣きながら眠ってしまった。そして今もまだ夢の中なのか、吉良に体をあずけたまま眠っていた。そんな獣都を起こそうと、吉良は何度も獣都の体を揺さぶった。しかし獣都が起きる気配は全くなかった。
「タツヤ、砂木沼、ちょっと手伝ってくれ。」
「うん、いいよ。」
二人の様子を後ろから見ていた基山と砂木沼は、吉良の頼みを快く引き受けた。それから吉良は獣都を背中におぶり、基山と砂木沼は二人の荷物を持った。そしてみんなの後に続き、バスから降りた。
「梅の奴、全然起きねえな・・・」
「もう少ししたら、起こしてあげようか。」
吉良と基山は顔を見合わせて頷いた。
それから選手たちはミーティングルームに集められ、監督である趙金雲を筆頭に大会中選手たちのサポートをしてくれる人たちの紹介が始まった。
「ふぁ~あ。」
吉良と基山のおかげで何とか起きた獣都だったが、まだ眠いのか大きな欠伸を一つ零した。
「梅さ~ん、前に来てくださ~い!」
そんな監督の声は獣都には聞こえておらず、獣都はただぼーっと前を見ているだけだった。今の獣都に何を言っても無駄。そのことは趙金雲が一番理解していた。趙金雲は「仕方ありませんね。」と呟き、自分で獣都について紹介し始めた。
「え~、皆さんが気になっているであろう獣都梅さんについて、私の方から更に詳しく紹介させていただこうと思いま~す!まず皆さんと梅さんの相性はかなり最悪です!何故なら~、梅さんは個人プレーを得意とし、認めた相手にしかパスを出さないからです。もちろん指示に従うのも、梅さん本人が認めた相手だけです!」
趙金雲は閉じていた目を薄ら開き、選手たちの反応を伺う。ほとんどの選手たちは何故そんな奴を選んだんだと言わんばかりの顔を見せた。特に“ピッチの絶対指導者”という二つ名を持つ鬼道有人は、趙金雲の言葉に眉を顰めた。