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イナズマイレブン-狼たちは狂犬を愛し喰う-オリオンの刻印

第1章 -


「てか、本当に大丈夫かよ?」
「何が?」
「な、何がって怪我だよ、怪我。」

獣都は不思議そうに吉良を見つめた。

今まで兄である椿以外に心配などされたことがなかった獣都にとって、吉良の言動・行動一つ一つが不可解なものであり、それに対しどう反応すればいいのか分からずにいた。そして吉良もまた、獣都のような人間を相手にするのは初めてで、少なからず接し方に戸惑っていた。

「痛いけど・・・こんなのいつものことだし・・・」
「バーカ。女ってのは傷なんて作っちゃいけねえんだよ。特に顔はもっと駄目だ。お前可愛いんだから、もっと自分を大切にしろよ。」

吉良は薄らと笑みを浮かべ、獣都の頭をわしゃわしゃと撫で回した。それはもう犬を撫でるかのように。だが実際、吉良には獣都が犬のように見えていた。そして獣都も獣都で犬のように大人しく、吉良に頭を撫でられていた。

(吉良ヒロト・・・優しい・・・いい奴・・・!)

獣都は吉良の手を取り、自分の頬に持っていった。そして吉良の手のひらにスリスリと頬擦りをする。そんな彼女の姿に、吉良の心臓がギュンッと音を立てた。

(な、なんだ今の?心臓の辺りから変な音が・・・)

「ヒロト、好き。」
「は、はぁ!?」

吉良は獣都の言葉に驚き、車内全体に響き渡る程の大きな声を上げた。すると吉良の声を聞いた選手たちは、どうしたどうしたと吉良の方を見た。すぐに吉良は「なんでもねえ!」と焦ったように言い、なんとか誤魔化した。しかし何となく察しがついている者も数名いたようで、吉良の席近くからは小さな笑い声が聞こえてきた。

「ヒロト、随分獣都さんから懐かれたみたいだね。」
「私もあの女を屈服させてみたいものだ。」
「く、屈服って・・・」

吉良と獣都の後ろの席に座っていた基山タツヤと砂木沼治の会話が聞こえた吉良は、顔を赤くし「お前らうるせえぞ!」と二人に向けて言い放った。

「照れるな照れるな!俺も必ずやそこの女を屈服させてみせよう!」
「砂木沼のは何か違う気がするんだけど・・・」

ガハハっと笑い飛ばす砂木沼に、基山は苦笑いを浮かべた。

「キモっ。」

もちろん二人の会話が聞こえていた獣都は、苦虫を噛み潰したような顔で、そう低い声で呟いた。獣都の隣に座っていた吉良は、自分と砂木沼に対する態度の違いに、ここまで違うものなのかと顔を引きつらせた。
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