イナズマイレブン-狼たちは狂犬を愛し喰う-オリオンの刻印
第1章 -
それから間もなくして、選手たちはバスへと乗り込んだ。
獣都は一番奥の席に着くと、窓の外をぼーっと眺め出した。そんな獣都の隣に、誰かがドスッと音を立てて座った。獣都は横目でチラリと隣に座った相手を見た。すると隣に座った相手と目が合い、獣都はサッと視線を窓の外へと戻した。しかし相手はまだ獣都をジィーっと見ていた。獣都も相手の視線を感じ取ったのか、再度横目で相手を見た。
「何?キモイんだけど。」
「キ、キモい!?俺はゴッドストライカーの吉良ヒロト様だぞ!」
「自分に様付けって・・・きしょ・・・」
「お、お前~・・・!」
隣で怒っている吉良を、若干引き気味に見る獣都。吉良は獣都の両頬を軽く引っ張った。もちろんそんなことをされて、獣都が黙っているわけもなく、獣都も吉良の両頬を吉良の何倍もの力で強く引っ張った。
「はにふるんはよ!(なにするんだよ!)」
「ほっひほほ!(そっちこそ!)」
頬を引っ張られているせいでお互い何を言っているのか全く分からない。一向に引こうとしない二人の目尻に、次第に薄らと涙が溜まり出した。それでもやはり引こうとしない二人。そしてこの二人のやり取りは、バスが出発するまで続いた。
「うぅ、痛い!」
「俺の方が痛えよ!こっちはこれでも手加減してやったんだぞ!」
「そんなの分かってるわよ!けど、痛いものは痛いの!」
本人が言うように、吉良はあれでも手加減をしていたのだ。そして獣都も吉良が手加減していることを分かっていた。
「わ、悪かったって・・・」
痛そうに頬を摩る獣都を見て、罪悪感を感じた吉良は気まづそうに謝った。しかし吉良の言葉が届いていないのか、獣都が吉良の言葉に反応することはなかった。そんなに痛いのかと心配になり、吉良は獣都の頬を優しく撫でた。
「な、何・・・?」
突然のことに驚いた獣都は、ビクリと肩を揺らした。
「そんなに痛むか?」
吉良が不安そうに尋ねる。
「い、痛いに決まってるじゃんか~!ここに来る前に何発殴られたと思ってんの~!」
「な、殴られた!?」
ここで吉良は獣都が不良であることを思い出した。吉良は更に獣都が心配になり、「もう喧嘩なんてするなよ。」と真剣な表情で、獣都に告げた。しかし喧嘩をやめる気などさらさらにない獣都は、「それは無理。」と真顔で答えた。それには流石の吉良も呆れた様子だった。
