イナズマイレブン-狼たちは狂犬を愛し喰う-オリオンの刻印
第1章 -
_____獣都梅。
趙金雲によって選ばれた日本代表メンバー。その中には、一人だけ女子選手が含まれていた。彼女についての情報は少なく、選手数名は彼女に対し不信感を抱いていた。
「皆さ~ん、そろいましたか~?」
のんびりとした様子でやってきたのはイナズマジャパンの監督である趙金雲。選手たちの視線は一気に趙金雲へと向けられた。趙金雲はゆっくりと選手たちを見渡し、選手が全員そろっているか確かめる。しかしまだそろっていなかったのか、趙金雲は「まだのようですね。」と小さく呟いた。
「おいおい遅刻とはいい度胸じゃねえか?」
吉良が自身のスマホで時刻を見ると、既に予定していた時刻よりも数分オーバーしていた。もちろん遅刻など許されるわけがなく、選手たちは彼女が来るのをまだかまだかと待っていた。
そして更に数分後。
ついに彼女がやってきた。
「やっと来たようですね。梅さ~ん、おはようございま~す!」
趙金雲は彼女に向かって、大きな声で挨拶をした。しかし彼女は趙金雲を見るなり顔を歪ませ、「うるせえよ、デブ。」と苛立った声で一言。そんな彼女の言葉に、選手たちはピシッと凍りついた。
(おいおいマジかよ・・・)
(とんだ不良女じゃねえか。)
(あれ、空耳かな?)
(い、今のはきっと聞き間違えだよね?)
彼女に対しそれぞれが思う中、趙金雲はおちゃらけたように「相変わらず毒舌ですね~。まあ私はそういうところも好きですけど♡」と言った。
「か、監督、彼女が獣都梅さんですか?」
「なんかすごい不良っぽいんですけど・・・」
なんとか場の雰囲気を変えようと、話をそらそうとする稲森。そんな稲森に続いて、万作も彼女について趙金雲に尋ねる。そして趙金雲は二人の言葉にニィッと不気味な笑みを見せた。
「折角ですし、彼女について少し紹介しましょう!彼女のお名前は獣都梅さん。年齢は14歳です。そして万作君が言う通り、彼女は不良です!どうやらここに来る前にも一悶着あったようですね~。」
そう聞いた瞬間、選手たちはバッと獣都を見た。確かに獣都を見ると、所々怪我を負っており、口元には少量の血がついていた。
「あ~、安心してよ。ちゃんと始末してきたから。」
(いや全然安心できねえよ!)
誰もが心の中で、そう叫んだ。