イナズマイレブン-狼たちは狂犬を愛し喰う-オリオンの刻印
第2章 狂犬と守護神
◆Nishikage Seiya◆
あれは・・・
トレーニングルームを後にした俺は、走り込みに行くため外に出てきていた。建物から出てすぐに見える湖。そこには、日本代表選手の中で唯一女である獣都梅がいた。
何をしているんだ?
湖の傍でしゃがみ込んでいる獣都。この距離から見ると、その後ろ姿は更に小さく見えた。俺は気になって、獣都のところへ行こうとした。しかし足を一本踏み出したところで、俺は行くのをやめた。
獣都のことだ。話しかけたところで無視されるか、罵倒されるかのどちらかだろう。獣都という女はそういうやつだ。関わるだけ無駄というもの。俺は気にするのをやめ、走り出した。
俺はとにかく走った。時間など気にせず、体力の限界まで。そして体力の限界に到達し、走るのをやめたころ。既に空は茜色に染まっていた。
俺はペットボトルに入った水を勢いよく飲み干した。やはり運動したあとに飲む水は格別美味く感じる。それからタオルで汗を拭き取り、ジャージに腕を通した俺は、チラリと湖の方を見た。
流石にいないか。
獣都がまだいるかもしれないという思いから、湖の方を見たがそこに獣都の姿はなかった。
やはり自分も野坂さんと会う前は不良と呼ばれる人間だったせいか、どうしても獣都のことが気になってしまっていた。
戻るか・・・
そう思い、建物の方へ向き直った瞬間、どこからがバシャバシャという水の音が聞こえてきた。
まさか、な。
俺は一応、湖の方を見に行った。するとそこには溺れかけている獣都がいた。
一体、いつから・・・!
すぐに俺は湖へと飛び込み、獣都を自分の方へ抱き寄せた。
「おい大丈夫か!?」
「ケホッケホッ!こ、これがケホッ・・・大丈夫に見えるわけ・・・!?」
とりあえず俺は獣都を連れ、岸に上がった。
獣都を見ると苦しそうに肩で息をしていた。
「どうして湖の中に?足でも滑らせたのか?」
「ちが、違う!誰かに後ろから押されたの!」
つまり獣都を良く思っていない誰かが、故意的に獣都を湖に突き落としたというわけか。
「そいつの姿は見たか?」
「見てない・・・突然のことで、それどころじゃなかったし・・・」
犯人は分からず、か。