第110章 *終曲ディアソムニア*
いつの間にか心には小さな兎が住み着いて、愛らしく跳ねるたびに感情を揺さぶる。みんなで守ってやりたい気持ちと囲い込んで独り占めしたい気持ちがせめぎあい、愛と呼ぶには酷く歪んだ思いが渦巻いていた
リリア『(年老いたわしにもまだこんな感情が芽生えるとはのう..この子を前にすると、気持ちだけでも若返ったようじゃ。マレウスもシルバーもセベクも..それに他の連中もみなこの子に惹かれ、自分の愛が一番だと火花を散らしとる。
本来ならこの気持ちは底に仕舞って、これからを生きる若者たちに譲るべきなんじゃろうが...どうにもそれが許せん自分がいる。くふふ、わしも負けてはおれんな)』
きっと彼らも自分と同じ感情をレイラに向けているに違いない。決して綺麗とは言えないその思いを一心に受けることになったレイラに同情しつつ、対抗心を燃やしレイラの腕をツンツンとつつく
リリア『久方ぶりの再会に嬉しい気持ちは分かるが、わしともギューッとしてはくれんのか?』
『ぇ...』
リリア『わしにも会いたかったじゃろ?ほら、おいで?』
自分と似た赤い瞳が魔力を帯びて光り、艶のある低音が誘惑する。まるで夢の中の若かりし頃の彼を見ているようで、レイラの胸を高鳴らせた
『ツノ太郎。リィさんのところに行ってもいい?』
マレウス『.....ああ。"今日は"これくらいで我慢するとしよう。だがその代わり、後ほど一曲付き合ってもらうぞ?』
『ん!』
リリア『ほう..意外とあっさり引き下がるんじゃな。おぬしも少し大人になったということか..』
マレウス『勘違いするなリリア。手を引くのはあくまで今日だけ。学園に戻ればそこからは遠慮はしない。お前やシルバーやセベクにも..この場にいる者たちにも、な』
リリア『くふふ、おぬしら若者たちには負けんぞ?年の功というものを見せてやろう』
『??』
2人の間に飛び交う謎の火花に首を傾げマレウスの腕から抜け出すと、腕を広げて待っているリリアの胸に飛び込む
小柄な体躯にも関わらず抱きしめる力は強く、頬を寄せる肌は温かく柔らかい。触れ合う体から伝わる鼓動が、改めて彼が生きている実感を湧かせ、落ち着いてきたはずの涙がまた溢れ出てくる