第110章 *終曲ディアソムニア*
マレウス『レイラ。僕との一曲の前に、どうしてもお前に会わせたい方がいる』
『.....ぁ...』
横に捌けたマレウスの背後から、城の記憶として蘇ったマレノアがこちらをじっと見つめていた
『お姫様..』
マレウス『ああそうか、お前は夢の中でお会いしたんだったな。だが現実では初めてだろう?
だから改めて紹介しよう.....僕のお母様だ』
『ぁ...あの..』
マレノア『....』
その声にマレノアは口を閉じたまま、ただこちらを見つめるだけ。あくまで城の記憶なので会話は勿論できない。残念そうに話すリリアの言葉に悲しげに顔を俯かせる
マレウス『例え会話ができなくとも、泡沫の存在だろうと、どうしてもお前に会わせたかった。僕の心を掴んで離さない愛しいお前を、お母様に知っておいてほしかったんだ』
『ん...会ったのは夢の中だったから、きっとこのお姫様は私のこと知らないと思う。でも..それでも、もう一度会いたかった』
覚えていなくても構わない。馴れ馴れしいと思われても構わない。ただもう一度、目の前の恐ろしく麗しい魔女に会いたかった
彼女のすぐ側まで行き、触れたい気持ちをぐっと抑え顔を見上げると、切れ長の美しいライムグリーンが静かに細められる
『!!』
その瞬間、目を見るのは不敬だと怒鳴られたことを思い出し慌てて顔を俯かせる。いくら記憶だけの存在とはいえ、マレノアなら雷の1つや2つ落としてきそうな気がしてダラダラと冷や汗が伝う
マレウス『どうした?』
『目、見たら怒られちゃうかも..』
マレウス『?』
どういうことだ?と首を傾げるマレウスに、リリアがこそりと夢での話を耳打ちすると、納得したように笑みを浮かべ、俯いたレイラの顔を上げさせた
『ツノ太郎?』
マレウス『大丈夫だ。昔がどうであれ、今のお母様はきっと気にはされていない。それより、しっかりとお母様の目を見てほしい』
言われるままにもう一度瞳を見つめると、鮮やかな鮮緑は穏やかな輝きを放ち、あの怒りに満ちた凍て刺す雰囲気は感じなかった