第110章 *終曲ディアソムニア*
初めて見た幻獣に興味津々な様子で恐る恐る手を伸ばして首に触れると、動物の毛とは違う鳥類特有の羽毛の感触に目がキラキラと輝く
嫌がる素振りを見せないのをいいことに手を広げ軽く抱きつくと、埋まりそうなほどにフカフカした羽毛に顔を埋めた
グリム『あいつ、幻獣の首に顔突っ込んでるんだゾ』
エース『お前らもそうだけど、恐れ知らずにも程があんでしょ』
ユウ『さすがに僕もあれはやらない』
『ん..フカフカであったかくて、良い匂い..』
幻獣『あの..黒兎様。そろそろご出発させていただきたいのですが』
『ごめん....ん?私が黒兎って分かるの?』
幻獣『微かに香る芳しいこの匂い、魔力の波長、その血のような真っ赤な瞳。少し前..といっても何百年も前の話ですが、貴女様と同じような人間をこの背に乗せたことがあります』
『!..そうなんだ。その人はいい人だった?』
幻獣『ええ。その方も初めて見た私に怯えることなく、そうやって首元に抱きついてきました。心優しく、強く、思いやりがあって...そして、その優しさを利用されて身を滅ぼした哀れな方でした』
『......そっか』
それ以上は深く話そうとしない雰囲気を悟り体を離すと、"ありがとう"と礼を言ってキャビンの階段に足をかける
幻獣『..レイラ様。貴女様はどうか、あの方のように他者のために身を滅ぼすような真似はしないでください。その末路は、存外酷いものでしたから』
『........』
忠告ともとれる願いにぎこちなく頷き、今度こそキャビンへと乗り込んでいく。その姿に一瞬切なげに目を細めると、幻獣は前へ向き直り大きな翼を広げる
幻獣『皆様、席にしっかりと深くをおかけください....では、参ります!』
バサッ!
ガラガラガラ!!!
2種の足が地を駆け勢いをつけ翼が大きくはためきだすと、車体を揺らしていた感覚がスッとなくなり、今度は重力のかかる浮遊感に包まれた
デュース『すげえ!馬車がすごいスピードで空に駆け上がっていく!箒なんて目じゃねぇスピードだ!』