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銀のヴィオラ 『ハリーポッター』

第30章 銀の花の闇



死神犬のような見た目の黒犬が、こちらへと駆けてくる


「ふふ、前より元気になったみたいだね」

この前までは骨と皮だけだったのに、今はしっかりと肉付きが良くなっている
クルックシャンクスに密かに食べ物を運ばせていた甲斐があった



「(クンクン)」
「あぁ、またご飯持ってきたよー」
「ゥワン!」

ポケットからナプキンを取り出す
今回はミートパイを作ってもらった
屋敷しもべ達が作ったのだが、試食させてもらうととても美味しかった
感想を伝えると、目をうるうるさせていたのは言うまでもない


「食べるかな?」

シリウスは未だクンクンとパイの匂いを嗅いでいる

やがて



パクリ
もくもく


「お!美味しい?」
「ヴワン!」
「良かった」

お気に召したようだ

結構な量を持ってきたのだが、一瞬で無くなっていく





「ワン!」
「ふふ」

犬が様になってる
シリウスは人間なのに、どうしても犬扱いしか出来なかった





「ウゥ…」

膝の上に乗ってくる

頬を擦り寄せて、心地良さそうに目を閉じた


(そんなに不安だったのかなぁ…)


どこかシリウスが寂しそうに見えた

ただの勘違いかもしれないが、気のせいじゃないかもしれない
まあ、ずっと牢獄にいれば人恋しくなるだろう

頭を撫でて落ち着かせる



しばらくそうしていると、規則正しい寝息が聞こえた

「(スゥー)」
「寝ちゃった…」
「……」


可愛らしい犬だった

ヴィオラよりも大きいのに、甘えるのが上手な犬
きっと、普通に犬として認識されれば人気が出るだろう

まあ中身は人間だから無理な話





「………………」




なんだろう。
この、可愛い着ぐるみの中の人が加齢臭プンプンのおじさんだと知ってしまった時特有のなんとも言えない気持ちは。

遊園地などによくいるマスコットキャラクターの着ぐるみの中の人の正体を知ってしまった時特有の、微妙な気持ちは。

子供の夢が壊れる時みたいに、喪失感がハンパない。




(だめだめ、そんな事思ってちゃどこでもやってけないよっ)




「クカー」
「…………」



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