第2章 出会い
蕾side
おかしい。
いつも通り大学に向かってたはずなのに、気付けば行き交う人の服が変わってる。
蕾(え?さっきまでみんな普通の服着てたやん。撮影でもしてはるんかな?)
辺りを見渡してもカメラと思しき物はなく、代わりにすれ違う人々からの視線を痛いほど感じる。
蕾(…うちだけ違う服着てたら浮くわなぁ…あ、もしかしてタイムスリップしたん?…なわけないか)
周りが着物を着ている中、蕾は清楚な洋服一式を纏っている。明らかに違うその服装は今更変えようが無い。
気にしても仕方ないと言い聞かせ、とりあえず大学があるであろう場所を目指して歩を進める。
少し歩いた所に目的の場所へ到着した。したはいいが…
蕾(え、ここっていわゆる遊郭…?道間違えた…?いや、もう1年経つのに間違えるわけないし…)
「遊郭-花-」と書かれた店の前で、うーん?と悩むおかしな格好をした少女の図は異質である。
?「もし…」
蕾「え?」
微かに聞こえた誰かの呼ぶ声。見渡すもそれらしき人物は見当たらない。
?「そこの変わった装いをしたお嬢さん」
蕾「…うちのことですか?というかどこから声が…」
?「こっちどす」
その声と同時に、目の前の店の格子窓からスッと緑色の扇子が出て来る。
蕾「わっ」
?「驚かせてすみません。…して、店の前で何してるんでありんす?」
蕾「その…道に迷って…?」
自身でも今の状況がよく分かっていないため、曖昧な答えしか返せない。道に迷っているというのも定かではない。
?「道に…?それにしては、迷いのない足取りでありんしたが」
蕾「あ…その…」
正直に大学に向かってたらここに着いたと言っても恐らく信じてもらえない。おまけに声の主は嘘を見破るのに長けている様子。
何と答えるべきか悩んでいると、店の玄関がギィと音を立てて重々しく開く。
出てきたのは、栗色の髪に綺麗な緑の目をした着物姿の男性。
?「中へ入っておくんなんし」
蕾「で、ですが…」
?「大丈夫、あんさんのお話を聞くだけでありんす。何か言い難い理由があるんでしょう?」
見透かされて恥ずかしくなるが、コクと頷いて手を引かれるままに座敷へ上がる。
豪華絢爛な座敷、綺麗に着飾った花魁の彼。緊張しないでと言われても、リラックス出来るわけがなかった。