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花達と蕾

第2章 出会い


蕾side

?「で、何があったのか話せる?」
蕾「あ、はい」

突然変わった口調に戸惑いながらも、ことの経緯を全て話した。
大学という、この時代の寺子屋のようなものに通う道中、気付いたらこの街に来ていたこと。自身の住んでいた時代とは異なる未来から来たことなど、凡そ信じられない事ばかりだが。

?「1人で不安だったろ。頑張ったな」
蕾「信じていただけるんですか…?」
?「タイムスリップとかはよくわかんねぇけど、俺たちと着てる物や持ち物が違うのが何よりの証拠だろ。それにお前、嘘つくの苦手っぽいし」

そう言ってニカッと笑ってみせる。
この短時間でどれだけ人の事を見抜くのだろうか。見抜かれて怖いと思わず、嬉しいと思うのも大概だが。

?「それはそうと、今は帰る場所がないんだっけ?」
蕾「そう、ですね…」

ここで彼と別れたら野宿かなぁと思うと、意識が遠くなるような気がした。

?「じゃあさ、帰り方がわかるまでここで働かない?俺の付き人としてさ」
蕾「…へ?」
?「あ、まずは自己紹介だな。俺はこの遊郭「花」の花魁の1人、江戸菊だ。本名は浦田渉。お前の名前は?」
蕾「あ、葵蕾です」
浦「可愛い名前だな!しかもこの店の名前とよく合う!」
蕾「ですが...」
浦「付き人って言っても、できる範囲の事ばっかだし!それに、衣食住の心配が無くなるぞ?」
蕾「お願いします」
浦「そうこなくっちゃ」

衣食住の心配が無くなると聞いて、これは誘いに乗るが吉と即座に判断した。
不安は尽きないが、この人…浦田さんの傍で働けるなら何とかなりそうな気がする。

浦「蕾」
蕾「なんですか?浦田さん」
浦「それ直さない?」
蕾「それって…呼び方ですか?」
浦「それもだけど、敬語無しで名前で呼んで?」
蕾「無理です。うちは付き人で、浦田さんは雇い主やないですか。上司に敬語無しは無理です」

ただでさえ顔が整っているのに、タメ口+名前呼びが他にバレたらお客さんに刺されるんじゃないか?
そこまで考えて身震いすると、頭上から影が差す。

浦「どうしても無理って言うなら、考えがあるけど?」
蕾「ひゃっ!?」

ふわっと耳に息がかかり、恐る恐る顔を上げると先程とは違う、妖艶な笑みを浮かべた顔。
息たっぷりの甘い声。頬をなぞるように触れる手。その全てが色気に溢れ、蕾のキャパは限界だった。
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