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【鬼滅の刃】雪は春を知れるのか【不死川実弥】

第1章 手に取ったのは


「これを読んでいる頃には、私はもうとっくにこの世には居ないことでしょう」
その一文から手紙は始まっていた。母さんは、少し不思議な人だった。晴れている日に出かけようとしたら雨がふるからやめておけと言ったり、町に一緒に出かけた時に前を歩いていた椿を急に引き寄せたと思ったらそこに瓦が落ちてきたり。いつもじゃなくて時々、そんなことがあるものだから不思議に思っていた。私たちがこの箱を開けることも分かっていたんだろうか。
手紙には、主に刀の事が書いてあった。これは鬼を退治するための特別なものであること、鬼を倒す時は首を落とすこと、刀だけでは倒せないので、昔教えた呼吸の仕方と技の出し方を思い出すこと。大半がが鬼退治についてのことだった。他にもなにか書かれていないかと裏返したりしてみたのだが、私たちはこれから、とても悲しい思いをするだろうということと、「どうか悲しみに呑まれず、前を向いて生きてください。それが母の願いです。」
で終わってしまっていた。最後まで読み椿と顔を見合わせる。
「鬼…だって」
呟きながらもう一度手紙に視線を落とす。
「そんなの、母さんが聞かせてくれていた話の中だろ…?」
「そう、なんだけど…でも、本当に居たらどうする…?」
「どうもしねぇよ、いないんだから」
ため息をつきながらす、と立ち上がって椿は隠し通路を見に行ってしまう。本当に居ないの?ならどうして母さんはこんなものを遺したの?あの寝る前に聞かせてくれていた物語は?ぐるぐると色々なことを頭が駆け回る。そして、物語の真似事で自分たちも刀で戦えるようになりたいと言った時の事を思い出した。あの時母さんはすぐ返事をしないでじっと私たち2人の顔を見てからとても大変だけどついてこられるのかと聞いてきた。
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