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【鬼滅の刃】雪は春を知れるのか【不死川実弥】

第1章 手に取ったのは


「雪の呼吸なんて聞いた事ないぞ…水辺りの派生か…?」
「と、聞かれましても…」
「地味だなぁ、ほんとになにも知らねぇんだな」
「はい…」
さっきから何度か地味だと言われるのだが、これはバカにされてる…?よく分からないけど…
「鬼はもういねぇんだろ、さっさと帰れよ」
家のことを聞いてこようとするその人を追い返すように椿が口を挟む。そんな言い方しなくても、と嗜めたが色々な事が起こりすぎて疲れているのは確か。
「こっちは姉さん2人とも死んで、気持ちの整理もついてないんだ。鬼退治とか、刀とか、考えられるほど余裕ないんだよ」
2人、と聞いて牡丹姉さんと春子姉さんの顔が浮かぶ。2人とも、もう本当にいなくなってしまった。行くぞ、と椿に手を引かれるまま家に帰ろうとするのを止められる。
「待て、2人って言ったな?埋めたのは1人だが?」
「…もう1人は、鬼になりました。だから、私が、首を…」
言いながらあの首を落とすまでの事が頭の中を駆け抜けた。震えそうになる手を抑えるようにぎゅっと椿の手を握る。
「鬼になった時、誰か近くにいたのか?!見たやつは?!」
春子姉さんが鬼だった、と聞いた途端その時の状況を詳しく聞かれたのだが、もちろんその瞬間は見ていない。私たちが家を出るまでは姉さんは確かに人間だったこと、死ぬ間際、誰かのことをほのめかしていたことを話す。
「それしか私たちの知っていることはないです。…姉さんを埋めてくれてありがとうございました」
まだ何か言いたそうにしていたので言われる前に話を切って、と一緒に家に向かって歩き出す。ちょっと歩いてから、あの人はここからどこに向かうつもりだったのか、道を知っているのかと思ってつい振り向いたのだが、そこにはもう誰もいなかった。結局名前も聞かないままだったな、とまた前を向いて。始終言葉をかわさないまま家に着き、中に入った途端にどっと疲れが来て。これからのことは起きてから考えよう、それだけ話して布団もしかないまま床で眠りについた。
「起きたら、全部夢だったらいいのに…」
意識のなくなる直前、ふとそんなことを願いながら。
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