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【鬼滅の刃】雪は春を知れるのか【不死川実弥】

第1章 手に取ったのは


あの時は、ごっこ遊びに乗ってくれたんだと喜んでいた。しかし実際本当にキツかった。私も椿も、母さんと一緒に遊べるからと必死にくらいついていたけれど。どこの親が、日が登ってから沈むまでの間に家から町までを何度も走って往復しろと言ったり、知り合いの猟師のところに連れて行って罠だらけの森を走らせたりするのだろうか。子どもの遊びの延長にしては度が過ぎていた。普通はしないんだと知ったのは、町で遊ぶ子どもたちの様子を見かけるようになってから。町からも離れているから、遊べるような友だちもいなかったし。手紙に書いてあった呼吸の仕方も、覚えるまで何度もやらされた。吹雪の夜のような、冷たい風の音がする呼吸。なかなか難しくて出来なくて、嫌だと一度だけ言ったことがある。その時はこれができるようになると、走る時、剣舞時、歌う時楽になるからと諭された。何とかできるようになった時に町までの往復で試してみると、言われた通りいつもより楽だったのでやる気になるきっかけとなったのだ。ただ、寝る時もできるように、と言われてそこで根を上げた。必要な時に使うので精一杯だったから。
「じゃあもう少し身体が大きくなってからの方がいいわね」
母さんはそう言って、呼吸の訓練は一時的に終わりにしてくれたんだけど。再開する前に死んでしまった。父さんと2人用事があるから、明日には帰るから、と言って出かけたきり、ただいまを聞くことが出来なかった。がけ崩れに巻き込まれたらしく、遺体も酷い有様だったからと骨になって帰ってきた。両親の訃報を聞いた牡丹姉さんと、骨壷二つになった両親を連れてきてくれた白くて綺麗な女の人とが来てくれて。女の人が子どもたち三人を育ててくれる人を探そうかと言ってくれたんだけど、牡丹姉さんがそれを断った。そこから牡丹姉さんと暮らし始めたんだけど。
「…姉さん、大丈夫かな…」
もう一人のお母さんみたいな存在になっている牡丹姉さんに優しい春子姉さん。二人にまで何かあったら、私たちどうしたらいいんだろう…。
「ねぇ椿、やっぱり私たちも…」
探しに行こう、と言いかけたところで口を塞がれた。何をするのかと椿を見れば険しい表情でじっと戸の方を睨みつけて。
「…誰かいる」
小さなつぶやきに反応したかのようにカリカリと戸を引っ掻く音が聞こえてきた。
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