• テキストサイズ

【鬼滅の刃】雪は春を知れるのか【不死川実弥】

第1章 手に取ったのは


春子姉さんの傘は、お店には卸していない。一度やったこともあるのだが、名のある職人が作ったわけでもないのだからと安く買い叩かれてしまったのでやめた。ちなみにその買い叩かれたものは、倍の値段で店頭に並んでいた。酷い商売である。以来私たちは、自分の手で売ることにした。最初はもちろん売れなかったが色々試行錯誤して、最近になってようやく持っていった分だけ売れるようになった。
私の家はいい竹が取れるからと町から少し離れた竹林の奥にある。暮らしにくいと思われるかもしれないけど近くに川もあるし、朝に出れば昼過ぎに町にたどり着けるのでそんなに大変と思ったことは無い。2人駆け足気味で町まで行き、昼前に着くことが出来た。色んな店や長屋も立ち並び、そこそこ賑わっている。はぐれないように、と手を繋ぎ、今日の店を開く場所をさがす。お店の前だと直ぐに邪魔されてしまうので慎重に選ばなくては。少し練り歩いて、建物と建物の間に出来た路地の前にしようと決める。それぞれの物置になっているのかあまり人も通らなさそうだ。荷物を包んでいた風呂敷をあけ、鬼の面と、麻の葉柄の羽織を椿に渡し、私は地面に風呂敷を敷いた上に座る。彼の背負っていた傘入りのカゴは、私の隣に。自分で背負ってきた包みを開いて、三味線を出す。椿はカゴの中に入れていた包みから、刀を出した。作りはしっかりしているけどもちろん偽物だ。道の端で何か用意をしている私たちが気になるのか足を止める人もチラホラ。その中には見覚えのある顔もいる。何度か傘を買ってくれている人達だ。音の調節をして、用意の出来た椿と視線を合わせ頷く。すぅ、と息を吸い込んで弦を弾いた。ベンッといい音が響く。
「さぁっ!お立ち会いお立ち会い!我ら兄妹、姉が必死になって作り上げた傘を皆様にお届けにあがりました!」
前口上を述べながら弾き続ける。それにあわせて椿がひらりひらりと舞う。もといた人に加えて、音を聞きつけてやってきた人達も集まってきた。
/ 19ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp