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【鬼滅の刃】雪は春を知れるのか【不死川実弥】

第1章 手に取ったのは


「八重ー、そろそろ行かねぇと」
朝餉の後片付けをしていると、外から声が聞こえる。兄の椿だ。兄と言っても、双子だからあまり意識したことがない。これから町に行かなくてはならないのだけれど、食器をそのままという訳にもいかない。急げばまだ日の高いうちに間に合うし。
「八重、あとはやっておくから…行ってきていいのよ?」
立ち上がろうとしたところです、と横から手が伸びてきて、皿やら椀やらの入ったお櫃を持っていこうとするのは春子姉さんだ。秋になったとはいえまだ残暑があるというのに綿入りの羽織を着ているのは、身体の弱いせい。日の下に何時間も立って居られないほどですぐ具合が悪くなってしまう。外にさえでなければ調子はいいようで、うちの稼ぎ頭として傘を作っていて。姉さんの作る傘は丈夫だし色が綺麗だからとなかなか人気なのだ。
「だめよ、お皿洗うなら外の井戸でやらないとだもの!姉さんが倒れちゃう」
持っていかれかけたお櫃を掴んで言えば、でも、と困り顔。姉さんのその顔には弱いのだが、妥協していい時とダメな時がある。今はダメな時だ。
「はいはい、これはあたしが持って行くからねー」
両者譲らず動けずにいると、今度は上から来た手がひょいと睨み合いの元を取り上げた。母さんの妹の、牡丹姉さんだ。父さんと母さんが死んでから、ずっと一緒に暮らしてくれている。
「これから傘売でしょ、行ってらっしゃい!」
「ありがとう、牡丹姉さん!行ってきます!」
牡丹姉さんになら安心してお願いできるので素直に引き下がり、すぐ行けるようにと用意しておいた商売道具を持って外へ。先に今日売る傘の入ったカゴを背負って待っていた椿から、おせーよ、とお小言。私のせいではないのだけれど、待たせたことには変わりないので一応謝って、町に向かって出発した。
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