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【鬼滅の刃】雪は春を知れるのか【不死川実弥】

第1章 手に取ったのは


戻ってきた私に、当然椿は怒った表情を浮かべて。姉さんは今度は私に襲いかかってくる。武器も持っていないのを見て、やりやすいと判断したんだろう。飛びかかってくる身体を躱し、地面を転がる。体勢を整えてのしかかって来ようとするのを、椿が体当たりで飛ばした。
「このバカ!なんで戻ってきたんだ!」
「だって!置いていけなかったから!」
私を庇うように前に立つが椿怒鳴る。髪を振り乱して、着物も血や、土埃で汚れた春子姉さんがゆらりと立ち上がってこちらに歩いてくる。伸びた爪、涎の流れる口からはみ出す牙、額の角。もう、到底人とは言えなかった。
「あれが鬼、とするなら…やっぱり首落とすしか…ねぇんだよな…?」
「首、切ったら…元に戻るのかな…」
「戻ったところで…牡丹姉さんは生き返らないけどな…」
牡丹姉さんは、やっぱり春子姉さんが喰い殺してしまったんだろう。睨み合ったまま、椿はこの後の動きを話した。首を落とすなら今この動き回られている状態だと難しい。さっき目指していた猟師の家の近くまで行けば獣用の罠が仕掛けられた地帯がある。そこまでなんとか二人で向かって、動きを止めた上で首を落とす。次に姉さんが襲いかかってきたらそれを避けて二人で走る。提案に頷いて落ち着こうと深呼吸。そして、姉さんが一歩踏み出しこちらに襲いかかってきた瞬間二人で走り出した…はずだった。姉さんはそのまま真っ直ぐ椿に飛びかかり、対応が遅れた彼は姉さんに押し倒されてしまう。持っていた刀はその拍子に手を離してしまい、少し離れたところに落ちる。私はすっかり身体が固まってしまって動けなかった。首筋目掛けて噛み付こうと大きく開けた口に、椿は自分の拳を思い切り突っ込んだ。喉の奥まで入った拳を噛みきれず姉さんがもがく。走れ、と叫んでいるのが聞こえるのに、足がすくむ。目の端に、母さんが遺した刀が入った。取りに行って、首をはねる…間に合うだろうか。失敗したら?痛みで叫ぶ椿の声。出来なければ二人で死ぬだけ、ひとりぼっちになるより、椿だけ死ぬよりずっといい。気づけば走り出していた。地面の刀を拾い、息を吸う。教えられた呼吸、教えられた技。地面を蹴って一気に距離を詰める。
ー・・・ 雪の呼吸、一の型・夜闇の初雪
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