第1章 きっかけは勘違い(前編)
「でも大変だね。クラスや部活の出し物に友達の手伝いもやってるなんて」
集中してるのか西川くんは無言で作業をしていたけど、何となく空気が重くて話しかけてみた。
「そうだな、でも八軒は俺よりもいっぱい背負いこんで無理してて、俺にできる事があるなら助けてやりてぇ」
「優しいんだ」
「まぁ、この貸しはちゃんと返してもらう予定だけどな」
感心したのもつかの間、当然だと言う西川くんはやっぱりいつもの西川くんだ。
「それを言ったら、こそ自分の作業ほったらかしてこんなことやってていいのかよ」
話しながらも西川くんの作業する手は早い。
「私の分はほとんど終わってるからね。西川くんには農機の勉強見てもらったりしてるしそれに、好きだから」
自分で描いたわけじゃないけどこうやって手伝ってたら、なんだか一緒に描いた気分になれて楽しい。
「へ?」
順調に塗っていたが間の抜けた声と同時にカコンという音がして、振り返ると足元のペンキの缶が転がっている。
「ちょっと西川くん! ペンキこけてるよ」
慌てて立てて元の位置に戻した。中身が少なかったからかあまり零れてなくて良かった。
「もう、どうしたのさいきなり……」
床を拭いて顔を上げると、正面にあった西川くんの顔が真っ赤になってる。
「え、西川くん?」
どうしたんだろう。耳は真っ赤で異様に瞬きをして、入学以来こんな西川くん見た事ない。
「が、全然気づかなかった。いや、そんな気も少しは……」
視線をそらしてぶつぶつ言う様は明らかにおかしくて、何をそんな動揺しているのかと不思議に思いさっきまでの会話を思い出す。