第1章 きっかけは勘違い(前編)
「お邪魔しま~す」
倉庫は広いけど物が多すぎて何がどこにあるのやら。
「何やってたの?」
「馬術部が出し物で使る馬ソリのメンテを頼まれてた」
なるほど、西川くん農業機械とか得意だもんな。
「でもこんな人目につかない場所で?」
やるならここでなくてもいいのに、わざわざ何でと思っていたらふふふと怪しげな笑い声をあげた。
「完成するまで誰にも見せない予定だったんだけどな。見ろ、この力作を!」
ジャーンと擬音を口に出しそうなほど右手で示した先には……
「すご~い! 可愛い!!」
ソリって聞いてたけどパステルカラーで可愛いし、側面にも絵が描いてあってこれがまた可愛い。
「まだ途中だけどな、完成したらもう一つにも描く予定だ」
得意げな西川くんは私が褒めたことでさらにニヤッと笑った。
全体的にアニメっぽい絵柄の女の子が描かれてて、こういうの痛車ならぬ痛ソリって言うんだろうし普通の人は引くだろうけど私は平気。
むしろ私もオタクでこういうのは好きだし、だから西川くんと話が合うってのもある。
雑誌を貸し借りしたり談話室でアニメ見たり。西川くんはオープンオタで二次元嫁がいっぱいいるけど、だからって三次元の私たちにも普通に接してくれるから話してて楽しい。
「へ~、こんなの描けるんだ。すごいなぁ」
近寄ってマジマジと見てみる。まだ塗られていない場所はあるけど、細かい所まで描きこまれていて相当頑張ってるんだなってのが伝わってきた。