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手中の星

第1章 無遠慮な神様



家を出て、ふらふらと歩き回っていると、山に差し掛かった。
人喰い山という愛称のあるこの山は、一定に生えた巨木が方向感覚を狂わせ、迷ってしまう人が後を絶たないという。
でも、私には関係がない。
歩いていれば、いずれは山からは出られるだろうし。
そこかしこに実る果実を見る限り、万が一出られなくとも飢え死にはしなさそうだ。

山の奥から、甘い香りがするのだけが不可解だった。
胸焼けするような、気持ちの悪い香りなのに、何故か足がそちらへ向かう。
逆らっても仕方のないことであるなら、従った方がらくだろう。
鋭い枝が引っ掛かっても、葉が視界を塞いでも、お構いなしに進むのには困ってしまったが。
あげく、ガサガサと掻き分け進んだ先に道はなく、崖から見事に落ちてしまったのだから、のうのうと従うだけでは駄目だなぁと、背に走る激痛に思った。

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