第2章 2#
「何や当たってもないんや」
『当たっても同じだよ!知ってるよ謙也くんが私のこと好きじゃないことなんて!私なんかいなくても謙也くんが笑ってられることくらい知ってるよ!!』
「うん」
泣きじゃくりながら全てを捨てて叫ぶに相槌だけ。
『こうやって財前くんに縋る自分の汚さだって…分かってるつもりだから…』
「つもりだけやん」
『ってか…謙也くんに聞いてくれたの…?』
「謙也さんはアホなんで部長に言うたんです。どうせ部長は先輩の気持ち知ってるから」
『アホじゃな…そうだよね…』
「なんやその手のひら返し。性格悪」
『だってあんなこと大声で言うんだよ…私が近くにいるの知ってて!私が好きなこと知ってたかもしれない…』
「やからそれ部長すよ。もうちょいで終わるんで」
『もうむり…忘れたい。全部忘れたい………』
財前の袖を握りただ泣きすする。
「…謙也さんの何がそんなにええんすか」
『優しいもん…純粋なとこが可愛くてムードメーカーで空気読んで寒いギャグわざと言って寒かったら上着貸してくれて数学教えてくれてよく褒めてくれてちょっと鈍感なところが愛しくてイグアナ飼ってて』
「きっしょもういいわ。そんだけ好きなら正直に伝えてきたらええのに」
『気まずい思いさせたくないから…』
彼が部活誌を閉じた。
「毎回後処理するんが俺とか…罪な男やな意外と」
涙を親指で拭われ撫でられる髪に身体が期待し始めてしまう。
「…俺にしといたら」
早速制服のジッパーを下ろしにかかる利き手。
「全部くれる、言うなら飛ぶくらいイかせるから」
不敵な笑みに静かに頷いた。
『好きに…していいよ』
「ん?」
『財前くんの好きなように…していいよ…』
子うさぎのように震えながらも誘う彼女に財前の脳髄は正確に衝かれた。
「泣いても知りませんよ…ていつものことか」
目の前に差し伸ばされた手。
この手を取ればもう戻れない。
『ね…財前くんは…私としたいとか思うの…?』
「?したくないやつ誘わんでしょ」
ふと、彼の核心に触れたいと願った。
『気持ち…知りたい…』
「俺の気持ちとかいるん?先輩が好きなんはそもそも謙也さん」