第2章 2#
「謙也ってどんな子がタイプなん?」
「エ?!なんやいきなり!」
「こえでか」
部活の練習中、謙也と白石の声がして会話の内容から聞き耳を立ててしまった。
「恋バナくらいええやん?」
「別に普通やで…明るい子が好き」
これは聞いてはいけない。
大人しめな自分は明るいなんてキャラじゃない。
「例えば誰なん」
「エ?!」
「うるさ」
純粋な謙也はこういう話にすら疎くやたらと緊張しているが、それも彼らしくて愛しかった。
「だれ」
「だ、誰とか?しし白石は誰やねん」
「委員長」
「あー…なるほど…即答やん…俺も答えなあかんくなったやんそこは隠せよ白石」
「恥ずかしがることちゃうよ誰にも言わんし」
聞いてはいけない自分じゃないと思っても僅かな期待が胸を急かす。
「特に謙也に好きな人おらんのは分かってるんやから」
「どうせお前には隠せんわ」
「しいて言えば3組に気になる子がおる」
「何でわかんねん…嫌やもう…」
嫌?
こっちがだ。
本当に聞くんじゃなかった。
いや、聞いてもない。聞こえた。大きな声で話すせいだ。
手洗い場で顔を洗うふりをして涙も排水溝へ流した。
こんな時浮かぶのはどうして彼の姿なのか。
「…どうしたんすか」
永遠のように感じた部活が終わり各々帰路に向かい静かになった頃、今週の部活誌担当の財前はそこに居た。
『っう…うぅ』
いきなり泣き出す彼女にもはや動揺もしない。いつもの事か、と書く手を止めないソファの上の彼に泣きついた。
「ちょっズレますて…後で相手しますから」
『もういや…こんな思いばっかりやだぁ』
「フラれたんすか」
『ちがう…ちがうけど…』