第2章 2#
「先輩は余裕なんかなくてええんですよ」
見下ろす彼と目が合う。
『…なくしてみてよ…』
起き上がり財前へと抱きついた。最大限彼へ想いを伝えたはずだが望む返事がないことが寂しい。
「何でそんな大胆なんすか…」
『だって…好きって言ってるのに』
「いや…好きとは言われてないし」
確かにそうだ。好きという言い方はしなかった。
『財前くんは…?』
「え…俺は何度も…」
言いかけて辞める彼を今度はの方が睨むような顔を作る。
「…体で答えたりますわ」
『やだ今言って』
既に伝えた言葉をいざという場面で渋りつつ片手で彼女の目を覆った。
「先輩が好きです。謙也さん追っ掛けてる時ですら」
『…そんな、なんで…』
「何でか分からんから好きなんやろ」
『いつから…』
「もうお喋りやめたら?」
唇へ当てられる人差し指。
「理由とか過去とかいらん。今が全て」
彼の言う通りだが、自分の都合の良さに目を瞑ってくれる為の発言のように聞こえる。
これまでの行為より一番感度がよく没頭してしまうような愛撫に清潔感のないソファへ溶けた。
ーそう、今が全て。
過去など関係ない、なんて便利な言葉。
ーーーーーー
「先輩そろそろ彼女とかおってもええん違います?」
「かかか彼女?!なんやセクハラ?!」
謙也へあからさまに想いを寄せる#NAME#のことをどう思うのか聞いてやろうと思ったある日。
「#NAME#先輩とかどうなん?仲ええし」
謙也のタイプとは違う彼女を傷付ける準備は出来ていた。
「#NAME#?ただの友達やけど?」
なんて言葉なく
「あ…あー…#NAME#?まあ、気になる…言うか…」
期待外れ所でない反応に無言で帰ってやった。
ーーーーーー
「先輩…俺は都合いいとか思ってませんから」
『え…?』
「好きな人が振り向いた事実だけでええやん。略奪したワケ違いますし」
朦朧とする意識の中で手を握られる。離さない、
「でもまた他の男に行くようなことはあってはならんよな?」
いや、逃がさないと言う様に。
「先輩のことは俺しか愛せんのやから」
冷たく笑う彼と繋いだ右手を握り返した。
愛に満たされた今が全てなのだから。