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君じゃないのに/財前裏

第2章 2#


彼の言う通りだが、これまでの行為に何の意味があったのか。本当に遊ばれていただけだったのだろうか。

『私に…触れたいとか…思ってくれてた…?』

「だってやらしいもん先輩。触りたくもなるやん」

『そ、れは…』

またも恥と後悔の念に駆られてしまう。何も教室であんなことをしなくても。

「ほらそうやって俯いて恥ずかしがるとこ」

『みないで…』

「謙也さんと話す時もそんなんしてたな」

撫でる彼の相変わらず冷たい手に何となく安心感さえ覚えていた。

「泣き止んだ?」

『あ…』

肩を押されソファに倒れ込む。

「どうせこれから泣くんやし涙取っときましょ?」

指先を絡められ、呼応するように握り返した。

『私…したことないから…優しくしてね…?』

「そんな余裕そうにされたらできませんわ」

カーテンを引き暗くなったのが始まりの合図かのようだった。

ーーーーーーーーーー


「…ちょっとやり過ぎた?」

『だいぶ…』

無造作に脱ぎ捨てた制服が散らばるソファの上でぐったりと横たわる。

「まだまだこれからやけど…いつまで持つかな」

持ち歩いているに違いない避妊具を取り出す彼に本当にするのだと現実を突きつけられる。

「なんすか…見せもんやないんやけど」

『い、いたいかな…て』

「ちょっと我慢やな…すぐよくなるんで」

唇を重ね、下半身に触れる熱量。早まる鼓動は不安か期待か恐怖かどれかも分からない。

「緊張してる?」

『うん…』

「…俺も」

優しく笑った瞬間の胸の奥と体の中を射貫かれた。

『あぁっ…う…』

「目閉じんで。ちゃんと俺のこと見て」

反射的に瞼を強く瞑った彼女はゆっくり目を開く。

「初めて抱かれた男の顔くらい覚えとかんとな」

普段より余裕の無さそうな財前の表情に失恋した痛みが消えていく気がした。

「ついてきて」

利き手を強く握る。

「後悔やさせません」

髪に滑らせる指先。

「…俺が忘れさせるから」

見詰め合い緊張感がピークになった頃舌先が交わった。

『あっ…ん…なんか、やらしい…』

「当たり前すけど…今俺らが何してると思ってん…」

律動が増す度に艶のある声に微かに潤う音。

「俺でもいいって思うようなってきた?」

『それって…本気で聞いてる…?』

「冗談か本気かで答え方変えるんすか?」
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