第1章 1#
「謙也さんの服汚れるんで」
匂いで分かった。彼の服を上から掛けられ落ちぬよう袖口を縛ったのだ。
『ひゃっ…』
制服の中に入ってきた冷たい手に思わず声を上げる。
「ちゃんと集中してや。この手は謙也さんのやと思って…」
太股を撫でる手がゆっくりと内側へ入っていく。
『いやっ』
反射的に足を閉じるともう片方の手で阻止された。
「抵抗できた立場と違うやん」
その言葉にぎゅっと口を噤む。
「大丈夫…慣れてきますから」
抱き寄せるように腰に手を回し密着しながら、下着の上から秘部に触れた。
「えー…そんなんでこんだけ濡れるん?」
引いてる、と言うよりは楽しんでいるような口調で緩く指先を動かされ、手の甲に爪を立てこらえる。
「ナカ刺激したことあるん?」
首を振る。
「こんな濡らせるのに勿体ないやん」
この手は彼じゃない。
「触ってもええ…?」
無理矢理触れてきそうなのに聞いてくる財前に体が期待を覚えてしまう。戸惑うが自分に拒否権もない。
頷くと彼が笑った気がした。
「まあ嫌や言われても拒否できる立場ちがうんで」
『ん…!』
下着の中へ入ってくる指先。違和感に身を捩るが寄せる手は強くなるばかり。
「力抜いて…俺を受け容れて」
『ぅ…ん…』
入口から長い指を侵入させた。緊張感のせいか蜜が引いていってしまっていることに彼は落胆する。
「緊張せんでや…今ここにおるんは?誰?」
彼の名を口にしない彼女の顔を服の上から乱暴に片手で押さえ付ける。
『んんっ』
「今こういうことしとるん誰や?匂い薄れてきたんか?」
『…謙也くん……』
恐怖から泣き出しそうになりながら口にした。
「そうです。こんな事何度もして慣れてるはずやん」
まるで洗脳。
でも本当にこれが想い人なら。
『あ…っ』
抱き寄せながら優しく自分の中を知ろうとする手。
「…痛くない?」
優しい言葉。
「俺にどうされたい?」
時々投げられる意地悪ささえも刺激となった。
『もっと…してほしい…』
布越しにくぐもった声だが確かに聞こえた。
「やらしいな」
満足気に口の端を釣り上げる。どんな顔で言っているのか知りたかったが、自分の顔が現れた瞬間の様子を見る勇気もなかった。