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君じゃないのに/財前裏

第1章 1#


『っ…ふ…ん…』

誰もいない夕方の放課後。

『…ぁ…っ』

机の上に無造作に置かれたジャージ。
ほのかに香る彼の匂い。
魔が差した頃には遅く、ジャージを抱くように抱えたままは床に座り秘部に触れていた。

この自分で触れただけの微かな快感が彼から与えられるものだったら。
もし付き合えたら、こんなことをしてたと知られたら。
どんな事であれ彼のことを考えるだけで下半身が溶けるような思いだった。

「何してんスか」

『っ!!!』

突如した少年の声にビクリと心臓が止まる。
心臓所か全身固まってしまい振り向けない。

この声

誰だっけ

知ってる

止まっていた分を取り戻すかのようにバクバクと跳ねる胸。

「なあアンタ…鍵閉める余裕もなかったん?」

意を決して声の方へ振り向いた。

『…お願い…誰にも言わないで』

薄暗い中光る目は懇願の眼差し。

「先輩…」

彼女の前に体育座りのようにして覗き込む。

「物の頼み方いうもんがあると思うんすわ」

『っ…財前くん…』

自分を脅そうとするのが下級生だなんて残酷な現実だと思った。
ジャージを汚れていない方の手で抱き締めるように、恥からか顔を隠そうとする彼女の手からジャージを引くとすんなりと渡される。

「…謙也さんのとか。趣味ワル」

『どこが…!いつも謙也くんのこと馬鹿にして…』

蹲りながら、自慰からか羞恥心から来たのか潤んだ瞳で睨まれたが財前の方は余裕の表情を崩さない。

「そんな口聞いてええんすか?」

血の気が引いていくのが自分で分かった。

「自分が汗かいた汚いジャージ抱えて変な気分になられてたって知ったら先輩どうなるんやろな」

『や、やめて…それだけは絶対嫌…』

「そうっすよね?その為に先輩ができることは?」

『…どうしたらいい…?』

財前の言わんとしていることを汲み取り恐る恐る聞いた。

「俺の言うこと聞くいうんやったら考えてもええですわ」

『…分かった、から…約束して…』

「頼み方。さっき言いましたよ」

涙を零しながら頷く彼女の目元を指で拭う。

「もう泣かんでください」

『あっ…!?』

突如頭から布を被せられ背中側で縛られた。


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