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君じゃないのに/財前裏

第2章 2#


『そうじゃな、あっ?!』

しどろもどろになっていると奥を強く突かれた。

「…俺を選ばんとしても謙也さんに戻るんはできんでしょ?」

そうだ。もう彼を好きでなど居られない。

「俺は先輩が好き」

唇が重なる直前の言葉だった。

『んっ…ん!んん!!』

熱く濡れる下半身の打ち付けに言いたいことも言えずは果てた。

「ナカすご…熱いし絡みついてくる…」

『ね…どういうこと…』

「散々アピったのに…?気付いてなかったはナシやで」

『本気じゃないと思った…』

「俺が色んな女口説いてるイメージあるんすか?」

『な…い…っ』

「まだ終わってないんで」

達して尚も続く律動に悶えながら適当に落ちている服を掴む。

「…知ってます、俺がおらんでもええことくらい。謙也さんが全てなんも知ってる」

聞き覚えのある台詞。

「傍でずっと見てた…」

大きく脈打つのを感じた時もまた熱を放った。

『…知らなかった…』

「知られてたまるか…」

整わない呼吸で二人繋がったまま。

『あっ?!まっ…さっきも…』

「飛ぶくらいイきたかったんは先輩やろ」

暫く離してくれなかったが、その間だけは全てを忘れられた。
このまま終わることなく続けばいいとさえ思ってしまった。


「先輩家どこすか」

『…20分くらいかかるよ』

「関係ないすよ。遅くまで付き合わせたし」

部室は行為の跡形もない程元通りとなり現実へ引き戻された気分だ。
暗い夜道に二人だけ。傍から見たら恋人のように見えるだろうか。

『あ、あの…』

「何すか?聞こえん」

言葉は冷たく聞こえるがの背に合わせて耳を傾ける財前が行為の後だからかときめいてしまう。

『財前くんてモテるよね?』

「…別に」

咄嗟に会話をしようと持ちかけたが普段彼が無口だったことを思い出す。

それが苦手だった。

『だってなんか…慣れてるし』

「…まあ器用なんで」

そういう問題ではない気がするが躱されてしまったので会話は途絶える。

『なんか…あんまり話してくれないね』

口をついて出た言葉に自分が驚いて顔を上げると同じ顔の彼。

『ご、ごめん…もっと話したかったから!財前くんを知りたくて…』

暗がりを明るく照らす街灯の下でのキスはひどく冷たく感じた。

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