第2章 2#
今自分達はどういう関係なんだろうか。恋人とは多分呼べないだろう。
でも最近頭の中にあるのはもう謙也でなかった。
「ちゃんどうしたん?元気ないやん」
『んー?普通だよ』
白石。あの一件依頼どうも彼の事は苦手だ。全て見透かされている気がしてしまう。
「そうか俺の思い過ごしか」
立ち去ろうとする彼にそっと胸をなで下ろした時。
「あっそうや」
体が固まった。
「今日謙也とカラオケ行くんやけど一緒にどうや?」
これは恋のキューピットと呼ばれるものなのだろう。
以前なら挙動不審になりながらも行くと言っていただろうが、今はあまり喜ばしくもない。
『あ…ごめん今日出掛けるんだ!』
「あー…そうなんか…ならまた行こな」
ようやく目の前から消えた白石に安堵の息すら漏れた。
何故人は貪欲になってしまうのか。
『片想いでいいって言ったのに』
小さな呟きは誰に届くこともない。
報われない恋はただ辛いだけだった。
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「なあ部室の使い方って知ってます?」
互いに脱ぎ掛けの服で肌を見せ合う様と背景がまるで一致していない。
「俺が優先でええんすか?」
『…うん』
「部長やって、もしかしたら謙也さんと先輩ワンチャンありそうで取り繕うとしたんかもしれませんよ」
『こういう時よく喋るよね』
「…!」
意外な発言に意表を突かれたのか彼は目を丸くする。
『私…謙也くんのこと諦めつけられたんだと思う』
「は…」
『前なら絶対遊びに行ってたと思うし…』
「そう簡単違いますて俺が抱いたからって」
『でも本当に…!』
話の途中財前は乱暴にロッカーを開けた。そこから取り出す緑と黄色。
『ッ…!!』
「これ。先輩が大好きなやつ」
投げかけられたジャージには忍足謙也の刺繍。
「あの日みたいにやって見せて。濡れてこんかったら本心て認めてもええですわ」
『や…嫌…』
「あとええこと教えたります。謙也さんはロッカーにストック持っとんねん」
『どういう…』
「俺が置いといたんです」
思考が追いつかず目を見開くことしか出来ない。
「先輩が残ることを知ってて。机の上にこんなん置いてあったら匂い嗅いだりするんかなって…予想外やったけど」
そもそも机に忘れ物とかありえんでしょ、という彼の声はもはや聞こえていなかった。