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淡雪に燃ゆる想いを【鬼滅の刃】

第1章 淡雪に燃ゆる想いを


「せっかくまた会えたのに、結局何も出来なかった」

あたしはそう呟いて団子屋の椅子に座る。この辺で鬼が出たって、あのカラス喋ってた。多分鬼なんて何処にでもいるんだと思う。みんなは、きっとそこまで大した事だと思ってないのだろうな。日常の中に潜む小さな違和感をスルーして過ごしてる。

「お団子、包んでください」

今日は猗窩座に会えるかどうか分からないが、彼は何故かあたしのいる場所を知ってるしきっと会えると思う。会えたら手渡そうと思いつつ、あたしは団子を手土産に店を出た。
まだ17時前なのに、もう当たりが暗くなってきた。冬の間は日照時間が短い。すぐに暗くなるから鬼達も活気付き嬉しいはず。あたしは別に嬉しくない。でも何となく力が湧いてくる気もする、きっと気のせいだ。
そう思いながら昨日の空き家に向かおうとしたが、頭の上にポツンと冷たいものが降ってきた。傘なんて持って来てないのに。そう思って頭に手をやれば、やがてパタパタと音を立てて水が空から落ちてくる。突然の雨に忙しなく動き出す人間達。地面を一気に暗い色に染めていく雨。

「最悪!」

あたしは街を出て森の中を走った。空き家までは少し距離がある。戻ろうかと迷っていれば、ふと見つけた洞窟のような穴。雨宿りにと駆け込んだ。

「またお風呂入らなきゃ駄目じゃん」

雨粒を手ではらい、薄暗い穴の奥に入っていく。その瞬間、カッと外が大きく光った。

「!」

一瞬で空が晴れたかのような煌々とした光のあと、ゴロゴロと空が唸る音が洞窟に響く。

「…雷。木が多いから落雷しそう」

危険だから洞窟の奥に行こうと、湿った石を踏みしめた。中は気味が悪いぐらい真っ暗で向こうから風が吹き抜けるような音がする。

「気持ち悪いなぁ……」

ブツブツ言いながらも座れそうな場所を探す。不気味なので早く出たいが、外は強い雨脚で大量の水が降り注いでおり、しばらくここから出られそうにない。
それに洞窟内には、なんとも言えない香りが充満してる。これはなんの匂いだろう。何かは分からないが、決していいものではない。湿気に混じり、獣が腐ったような、それか生ゴミみたいなそんな臭いがするのだ。
そう思った瞬間、一際大きな稲光が空を駆け抜けた。それは凄まじい雷火で、洞窟内の全てをカッと明るく照らす。目が潰れそうなほどの眩い光の中に見えた人影は、あたしの背中を冷たくさせた。
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