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淡雪に燃ゆる想いを【鬼滅の刃】

第1章 淡雪に燃ゆる想いを


あれから図々しい事に風呂どころか朝ご飯まで出してもらい、大満足のあたしは童磨の屋敷を後にする。
猗窩座を探しに行こうかと思ったが、見つけても付いてくるなと言われそうだったのでやめた。
だからと言ってすることもない。他の鬼は陽が出てる内は外に出れないらしいし、きっと暇してるんだろうなと思う。でも外に出れるあたしでさえも、する事がなくて退屈。猗窩座いわく、どうやらあたし以外の鬼達は人間だった時の記憶がないらしいし、あたしはなんともラッキー"鬼人間"だ。
だがしかし、死ぬ間際の出来事がどうしても思い出せない。だから死んだ気がしないので、どうにもモヤモヤするのだ。これも鬼と人間のハーフであるあたしの悲しい運命か。

「……あ、家に戻ればいいんだ!」

ハッとひらめいた。なぜ今まで思いつかなかったのだろう。それにあたしが死んだこと、みんなはもう知っているはずだ。だが鬼になったとは思うまい。詳細を知るべく何があったのか家族に聞くことにしようと、数日ぶりに家へ帰る事にした。
あたしの家は街から少し離れた場所にある。ちゃんと分かる!と思いながら、見覚えのある道を進んでいく。
確かあたしは四人家族だった。お父さん、お母さん、お兄さん、そしてあたしの四人構成。でもお父さんとお兄さんは、外に出稼ぎで家にはほとんど帰ってきてなかった。寂しい思いも沢山したけど、楽しいことの方が多かった。やっぱり人間に戻りたくなってきた。

「ほーらね、覚えてるじゃん」

15分ほどで家に辿り着き、自宅の前で大きめの独り言を出す。まだ数日しか経ってないのに何故か懐かしい気持ちがする。

「ただいまぁ!」

いつもの調子で木の扉を開けた。

「あれ」

間の抜けたあたしの声が部屋に響く。家には誰もいなかったのだ。だが昨日泊まった空き家のような、人がもう住んでいない家の空気ではないし生活感もある。

「出掛けてるのかな」

あたしの家族は皆、よく働く人達だった。そういえばそうだったと、しみじみ思いながら家の中に入る。そして部屋の真ん中に腰掛けた。
部屋の中は時が止まったような脆弱に包まれていて、この家はこんなに静かだったかと少しばかり心寂しくなる。
あたしが鬼になったと知ったら、みんなはどう思うのだろう。なぜだと悲しむのか、鬼でも生きているのならと喜んでくれるのだろうか。
あたしはただ黙って家族の帰りを待った。
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