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淡雪に燃ゆる想いを【鬼滅の刃】

第1章 淡雪に燃ゆる想いを


目を覚ますと朝だった。外で雀が鳴いてる声が聞こえる。窓から差し込む細い光の筋が畳を照らしていて、囲炉裏の底にある燃えカスを見たあと、猗窩座の姿がないことに気付いた。いつの間に出たのだろう、そう思いながら両手を持ち上げて視界に入れる。

「………やっぱり鬼」

自分の手を眺めてあたしは呟く。夢だったらいいなとか思ったけど、鬼でした。もうそろそろ認めざるを得ないが、きっといいことあるさと起き上がる。硬い畳で無防備に寝たせいか、身体が軋んだ。

「痛………」

鬼でも寝違えるらしい、それともあたしだけなのか。ポキポキと骨を鳴らしながら伸びをした。空き家にあったものを使って、外に出れるだけの支度をする。

「お風呂入りた~い…」

着物に鼻をつけてクンクンと匂う。銭湯に行きたいと思ったが、あたしは無一文。やはりこうなるとあの人を頼るしかない。






「おはようございまーす!教祖~!」

昨晩来たばかりの大きな門の前で、あたしは大きな声を出す。猗窩座には行くなと注意されたし、もう来ないとも思ったが、ここは仕方ないでしょと言い返したい。女の子なんだからクサいままでウロウロしたくない。

「童磨~、いないのかな」

誰も出てこないと半ば諦め気分で立っていれば、白い着物の信者が玄関からちらりと顔を出してあたしを見た。

「あ、良かった!居た!」

門から少しだけ顔を出した白い着物の信者が、トコトコとこちらに駆け寄ってくる。
どうやら童磨はいないらしい。なんとなく匂いというか、気配でわかる。人間の時にはなかった感覚だ。

「何かお困りですか。どうぞお入りください」

「えっ、良いんですか」

自分からノコノコ来たくせに、思っていたよりも神対応で戸惑うあたし。どうやら彼が言うには、童磨率いる万世極楽教は困ってる人は全員助けるのがモットーらしい。着物の彼は廊下を歩きながらそう言う。童磨は信者達にとても親切で、多大なる信頼を得てるようだ。

「教祖様が居なくても来て頂いて構いません。いつでもどうぞ」

辿り着いたお風呂の前でそう言われる。あたしは小さく頭を下げて、そそくさと風呂場に入った。

「どれだけ親切でも鬼の皮を被ってるんだけどね」

独り言を呟きながら服を脱ぐ。本当は服の洗濯もしたかったけど、着物は白い物しかないと言われたのでやむを得ず断った。そして鼻唄まじりに浴場へ。
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