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淡雪に燃ゆる想いを【鬼滅の刃】

第1章 淡雪に燃ゆる想いを


「おい」

不意に真上から聞こえた声に足を止めた。その低くてハッキリとした声色で猗窩座だとすぐにわかった。気配を探していると、彼が何処からか降ってきて目の前に降り立つ。ふわりと揺れたピンク色の髪。それを確認した途端、ぎろりと睨まれた。

「なぜあの男のところにいた」

「…だって、お腹空いてたから」

「ただでさえお前は弱いんだ。そうで無かったとしてもあいつを頼るな」

「弱い弱いって、そればっかり」

「紛れもない事実だ」

猗窩座があまりにも濁りのない瞳でそう言うものだから、もういいやとすぐに諦める。

「行くとこなかったし、童磨が美味しいご飯出してくれたの」

「くだらない。鬼同士で馴れ合うな」

「…なんで、別にいいじゃん」

「何一つとして良くない。あの男の素性を知らず、もし弱いお前が……」

「はいはい!弱くて殺されちゃうんでしょ!もう行くのやめます!」

彼へ向けて歯を剥き出しにし、あたしはその隣を過ぎていく。

「おい女、待て」

「待たない」

「俺は無惨様にお前の事を任された。勝手な行動をされると困る」

「変なの、親みたいな事言ってる。鬼なんだからあたしが何処にいるかぐらい何となくわかるでしょ」

あたしの言葉に彼はぴくりと眉をひそめた。怒ったかと思いきや、そうではないらしく猗窩座は不思議そうな顔であたしに尋ねてくる。

「お前、親のことを覚えてるのか?」

「…覚えてるけど」

逆に覚えてないのかと聞こうとしたが、尋ねてくると言うことは聞くまでも無くそういうことだ。

「あたしは鬼になる瞬間の記憶がないだけで、その前のことは覚えてるよ…」

何かを考え込み不可解だというような表情をする彼。なんだか怖くなってそう言えば、猗窩座はそれ以上何も言ってこなかった。

「…とにかくあの男の所にはもう行くな。何か気になる事があるのなら俺に言え」

小さく呟いた猗窩座。あまり納得できなかったけど、あたしは渋々頷いた。
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